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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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コントロールされた暴力

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 着ていた学ランは膝くらいまでの長さで“中ラン”というやつ、襟のカラーは6センチの高さ、内側には鷹の刺繍入り。そしてズボンは、ぶっといボンタン。こんなの着てるから誰も絡んで来ない。でも決して、不良グループに入ったとか、番長になったわけじゃない。誰にも文句を言わせず、当時のファッションを楽しんでただけなのだ。

 先生もオレには「勉強しろ」とは言わない。何故なら学業成績は良かったから。逆に不良グループに対して、お手本として位置付けられた。ましてや万引きや校舎の窓を割ったりはしない。根は真面目だったし。でもタバコはこの頃覚えた。バスケ部の部室でも何人かが吸っていた。
 ある日、抜き打ち検査があり、部室の吸い殻が見付かってしまった。それで生活指導の先生に、3年の部員だけ呼び出された。オレ達は最後の公式戦を前にして、クラブ活動停止の処分を覚悟した。

「なんでこんなことするんだ! どうなるか解らんのか!」
 オレはキャプテンだった。タバコはオレの影響で吸い始めた部員も多い。
「自分が吸いました。オレが悪いんです!」
罪を被ろうとしたわけではないが、一応言ってみた。
「誰が吸っても同じだ! お前らは他のクラブのお手本にならんといかんだろ!」
確かに非行もあるが、テストの成績ではどのクラブよりもいい生徒が集まっているし、バスケも市の大会で上位を狙える強豪だ。文武両道に、ちょっとおちゃめな仲間だっただけだ。

「このことは無かったことにする。誰にも言うな!」
「え・・・?」
 まさかの言葉に驚いた。
「もしこのことがバレたら、公式戦は棄権させる」
 本当にこんなことがあったのだ。秘密を守ることで、すべて無かったことにしてもらった。
 ラッキーと思い、調子に乗ってタバコはやめなかったし、この先生の指導にも疑問が残るけど、今思えば感謝かな。ちなみにタバコは二十歳の頃にやめた。

 初彼女は、隣の階修中学の女子。学習塾で知り合った。でもこの子、階修中学の番長の元カノだったらしい。(そんなこと聞いてなかったけど)
 その中学にバスケの練習試合に行った日のこと、後輩の1年生がカツアゲに遭ってしまった。泣いている1年を見て、オレ達3年はすぐにその犯人を捜した。特徴は短い金髪。するとその生徒はすぐ近くにいた。

「おい!」
 オレはドスの効いた声で、そいつを呼び止めた。そして振り向く相手の顔面を、間髪入れず数回殴る。本気でじゃない。こいつの仲間は連れの部員が殴る。相手はすぐに奪ったお金を差し出した。そして無事、後輩のお金を取り戻してやった。

 オレ達はこの行いの善悪など考えていない。相手に大けがをさせない程度に暴力をコントロールして、一種のノリのような感じで喧嘩を楽しんでいた。タバコ事件の反省など誰もしていなった。しかしこのことは当然、その中学の不良グループとの抗争に発展するに決まっている。

 その日の練習試合の最中、さっきの金髪が助っ人を連れて体育館に乱入して来た。これはヤバイ。試合中のコートに入り、こっちに向かって来る。その中のボスキャラに「お前が山凌中学の木田か!」と叫ばれた。
(何で名前知ってるんだ?)
すぐに理解できなかった。オレ達は山凌中学を代表する不良グループってわけでもないのに、この階修中学ではオレの名前が通っているようだった。
 相手は10人くらい。でもバスケ部は全員背が高く、迫力では引けを取らない。一触即発の雰囲気。試合中のテンションでいたオレ達は、臨戦態勢が整っていた。これは重要で、全く怯えを見せない表情は、相手の次の一手を封じることが出来ていた。先生の方が慌てているが、そこに割って入ったのは、当時の彼女だった。

「タケシ! 何してくれてんだよ! あたしの彼氏に手ぇ出したら、許さないからね!!!」

 体育館の舞台で観戦していた彼女は、駆け寄って来てオレの横に立った。度胸のある女子だ。普段は全く見せない表情だった。
(この娘、猫かぶってたのか)その後の人生で気の強い女性が好きになる理由は、こんな経験から来ているのかもしれない。

 彼女の迫力にタジタジのタケシ君は元カレ。さすがに元カノにそうまで言われたらカッコが付かない。
「このままじゃ済まさないからな・・・」と捨て台詞を残し去って行った。彼女のせいでオレの名前が知られてるのかって解った。

 それ以降オレ達は、外を出歩く時はビクビクしながら気を付ける毎日だったけど、階修中学の奇襲に遭うようなことはなかった。それもそのはず、大人になってから知ったことだが、オレの彼女の家は地元の建築会社。でも幹部社員はほとんど暴力団員だったらしい。オレはそんな娘に守られてたのかって・・・複雑。