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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第51話 奪い返すのじゃ!






ラロ・バチスタ博士は、“イズミ”に興奮を収めてもらってから、まずはターカスのパーツを組み直してくれた。

「さて、と…では、融合炉じゃな。ここは慎重に…」

私はその時、数日前にお嬢様に聞かれた、「ターカスの使っている、核融合炉とは、なんなの?」という言葉を思い出した。

旧時代、人類が化石燃料を使い尽くしてからも、水力により取り出したエネルギーを利用し、効率化に成功した核融合炉は、稼働が可能になった。

現在の核融合炉は、もっとエネルギー回収率の良い原理に置き換わり、ターカスの使っている小型核融合炉は、「遺棄物などのコストが高い」として、一般のロボットには使われなくなった。

しかし人類は、ロボットにさえ転用して量産出来、専門家であれば扱える程に、核融合炉を、安価かつ安全にしたのだ。そんなのは、元は夢のような話だっただろう。


私は、エネルギー発生で放射能が漏れだす前に、ターカスの炉に遮蔽版を取り付け直す博士の後ろ姿を見ていた。


「これでおおむね良し、じゃな。後はちょいちょいと…」

組み立てが終わると、安全を察知した核融合炉は自動で働き、ターカスは意識を取り戻す。ヴヴン…と、彼の頭脳の辺りが音を立てるのが分かった。

ターカスの目にランプが灯り、それはまた不安げに、私達を見回す。イズミは気の毒そうに眉を寄せ、しかし黙っていた。私も、何も言えなかった。しかし、博士だけはこう言う。

「おはよう、ターカス。どうやら、君に悪さをした奴が居たようじゃ。儂の古い知り合いでな。今度、君のパーツを取りに、そこへ出向いていくんで、ちょいと話を聴かせてもらえないかな?」

「え、ですが…」

ターカスは、一度躊躇う。私も、軍の関係者からターカスが戻された時、「戦時の記憶は全て上書きしてある」と聞いた事を思い出した。

「ふむ、そうか。軍内部の情報、だったか…では、待ちなさい。今上書きを取っ払ってあげよう。これは急務じゃ。そのくらい、許してもらうとするさ」

そう言うと、博士は作業場の中にあった金庫から、高価そうなデバイスを取り出してきた。

「博士、そちらは…?」

少々不安だったので私がそう聞くと、博士はこう答えた。

「これは、ちょっと口外して欲しくない物でな。自分に権限のない、ロボットの内部の情報へアクセス出来る。要は、ハッキング専用のPCなんじゃ」

「ええっ!?」

私は、ますます不安になった。そんな物を使って記憶を復元したなんて軍関係者に知れれば、法による罰則も免れないかもしれないからだ。しかし、博士はすぐに片手を顔の前で振り、笑う。

「いやいや、「主人が突然亡くなったロボットの記憶にアクセス出来ない」、「パスコードが紛失している」なんて相談事も持ち込まれるんでな。その為に持っているだけじゃよ。修理工の間では、よくある事じゃ。まあ、軍での記憶はデリケートじゃし、聴き取りを終えたら、もう一度上書きをしよう」

それで私達は、やっと安心した。博士はデバイスを立ち上げると、そこから生じる光を、ターカスの目に焦点を当て照射していた。