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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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「フム…ここは、もちろん違うじゃろうな…ここも…関係がないからのう…早く外さない事には…」

博士は、自分にしか分からない独り言をたくさん言い、ネジを外したり、カバーをと取り除いたりしていた。その内に、ターカスのスケプシ回路が表れる。

それは全く完成度の高い、小さな球形の空間だった。

そこには、ごく小さな部品がたくさん押し込まれて、街のようにきらきらと光り、芸術家が作った作品のようだった。でも、奇妙だと思った。

私が“奇妙だ”と思ったのと同時に、バチスタ博士は「あっ!」と叫ぶ。

「やーっぱりそうじゃ!脳細胞を当てはめたパーツが抜き取られておる!君!これは由々しき事態じゃぞ!まだ聞いていなかった!ターカスを解体した工学者は分かるのか!?」

慌てて振り向き私に詰め寄った博士を、傍に居た“イズミ”は止めたそうにしていたが、彼も驚いており、博士の慌てようがただごとではないと分かった。

私は両手を上げて博士との間にやんわり壁を作り、落ち着いてもらいながら話をする。

「え、ええ…軍の方のお調べしたお話によりますと、なんでも、穀物メジャーの、デイヴィッド・オールドマンという研究者だとか…」

「かっ!?」

博士はその時、両目を大きく広げて叫んた。その目があまりにぎょろっと大きかったので、私は驚く。

それから博士はふらりと体ごと虚空へ向かって、一瞬、放心したように見えた。だが、博士はだんだんと物凄い形相になり、脅威を前にしているように歯を食いしばって、その隙間から「いいい…」と声を漏らし、肩を震わせる。

下を俯いてからは何かをぼそぼそと呟き、博士はしばらくこちらを見なかったが、やがてこう呟いた。

「まずい奴に見つかった…一番まずいぞこれは…」

そう言ってラロ・バチスタ博士は私を見て、私の両肩を、小さな両手でがっしと掴んだ。彼は頼み込むようにこちらを見上げて大声で叫ぶ。

「その軍人に、儂も会う訳にはいかぬか!もしくは、早急に政府に話を通さなきゃならん!これを悪用されたら、儂の地位どころじゃない!国家転覆の危機じゃ!」


その叫びは、ターカスには聴こえなかった。