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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第49話 博士の告白





私はターカスに訳を話した。ターカスは少々納得がいかなかったようだが「分かりました」と言い、バチスタ博士宅に行く準備をしてくれた。

それから私はお嬢様のお部屋の扉をノックした。一度ノックをしてもお嬢様はお返事をなさらなかった。

「ヘラお嬢様、お休みでしょうか」

扉越しにそう聞くと、「起きてるわ。何の用?」と返ってきた。大丈夫そうだと思ったので私は扉を開け、部屋の奥へ歩く。


部屋に入ってすぐに見えるのは、お嬢様の好きな石造りの白くて丸いテーブル。それはレース編みのテーブルクロスが掛けられている。テーブルに乗った花瓶には、いつも庭で摘んだ薔薇が生けられていた。

奥に見える部屋の一面を覆う大きな窓には、モスグリーン色に花模様が散りばめられた、落ち着いたカーテンが掛けられている。お嬢様の御母上の持ち物だったと聞いた。

中に入って左を振り返ると壁際にクローゼットが設えてあり、いつもそこでターカスがお嬢様にドレスを選んで差し上げていた…

そうだ、ここにはいつもお嬢様をよく知るターカスが居た。それでこの部屋は完全だったのだ。私はそれを取り戻すのだ。お嬢様のために。


私はお嬢様のベッドへ近寄り、顔を伏せているお嬢様が振り返るのを待って声を掛けた。

「ターカスを、御父上のご友人のロボット工学者の方が診て下さるそうです。その方は「今日すぐに」とのお話で…」

私がそう話し始めると、お嬢様は怖そうに眉を寄せ、また、どこか期待をしているように目を見開いた。

「ターカスを、その方の元へ連れて行っても、構いませんでしょうか?」

お嬢様はふいと私から顔を逸らすと、何かを考えるように、ベッドに両手をついたまま目を伏せていた。そして何も話さずにただ一言「いいわ」とだけお言いになった。

「有難うございます。ターカスと一緒に行って参ります。後のお嬢様のお世話にはユーリとオスカルを置いて行きますので、彼らにお申しつけ下さい」

「わかったわ…」




私とターカスは小型のシップに乗り込み、ラロ・バチスタ博士に教えられたアドレスまで急いでいた。私は博士がどんな人物なのか、何をしてくれるのかを想像しながら、前の晩に博士が口走った事を思い出していた。

“博士があんなに急いでいたのが気にかかる…「ターカスが変化するはずがない」といったような口ぶりだったのも…本当に、ターカスは直せるだろうか…”

考え事の合間で私は隣に座っているターカスをちらと窺い見た。彼はシートベルトを締めて、きちんと前を向いて座っていた。私はまた考え込む。

“それに、ロペス中将も、オールドマン氏の自宅でターカスらしきロボットを見たと言っていた…もしここに居るターカスが偽物だとしたら、私達では直せないんだろう…”

私は考えていた。前当主ダガーリア様は、なぜターカスに自由意志を与えようとなさったのだろうと。

“ロボットが自由意志を得る…それは本当に必要な事なのだろうか…”


やがてシップの中には、指定したアドレスに着いたとアナウンスがあった。でもそこは都市部だったので、私達はパーキングを探すのに少し手間取り、博士の自宅へ赴いた。