メイドロボットターカス
「コーネリアー!こっちよー!」
あれから一晩明けて、私たちは「前ライン川」という川のほとりで、散歩をしていた。
ターカスが作ってくれた歩行器は座れるようにもなっていて、車輪式ではなくホバー式なので、私はウサギのコーネリアを連れてそこらじゅうを走り回り、後ろにはターカスが浮かびながらついてきてくれていた。
コーネリアはウサギだからぴょんんぴょん飛び跳ねていってしまうし、私の歩行器のスピードが速くなったのは、けっこうよかったみたい。
でも、私にも心配事があった。
“もしや、叔母さんが私を探そうとでもしたら、ターカスを追跡すればすぐにわかってしまうんじゃないかしら…ロボットたちはみんなそれができるように作られていると、教師が言っていたわ…”
朝は、ターカスが見つけてきた麦のお粥を食べた。麦といっても、それは指定改良作物となっているから、栄養面ではすべてをカバーできて味もよい。家庭料理の定番だ。私も、旧時代の麦は食べたことがない。今は作っているところはなくなってしまったから。
そして昼には、ターカスはまたカレーを作ってくれた。
「まあ!今度はフルーツね!」
目の前には、とてもフルーティな香りのするカレーがあった。
「ええ、そうです。こちらは栄養面でじゃがいもなどに劣らない、「ハーベス」と「ナバス」を使いました。魚はすり身にして衣をつけ、揚げ焼きしておりますので、食べ応えもありますが、ふんわりとしていますよ」
「わかったわ、いただきます!」
「ハーベス」は、古くは「マンゴー」と呼ばれていたものが原種だと「中世進化学」の時間に習ったけど、私は「ナバス」を食べるのは初めてだった。でもそれは、小さくて丸いシャリシャリとしたフルーツだった。
フルーツはどちらも甘くて、酸味はほとんどなく、まるで子供の頃に食べた甘口カレーのように、ルウにその甘みが溶けていた。
魚をすったものは、分厚い衣にカレールウが染みてじっとりと重かったけど、その中の甘く味付けされた魚のすり身がふわふわとしていて、どんどんごはんが進んだ。
「合格だわターカス!いいえ、100点よ!」
「ありがとうございます、ヘラお嬢様」
ターカスは頬の中にあるランプをピンク色に灯して顔を赤くし、にこにこと笑ってくれた。
「コーネリアのごはんは、ずっとキャベツでも大丈夫なのかしら?」
「ウサギは草食動物ですので、植物からの栄養摂取をしているのです、お嬢様」
「そうなのね。知らなかったわ!わたくしも、不勉強ね」
「お嬢様がお住まいの区域にウサギは今住めませんから、お習いにならないのも無理はございません」
「そうね。でも、ターカスが知ってるなら、私、安心してコーネリアの世話ができるわ!ねえねえ、今度は違うものを食べさせてあげましょうよ!」
「そうですね、それではお嬢様、午後はコーネリアが食べる草について、わたくしがお教えさせて頂きながら、採集に行くというのはどうでしょう?」
「素敵だわ!そうしましょう!」
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎