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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第5話 コーネリアが!






「アームストロング殿、それは?」

時間は掛ったが、私とマリセルは、ターカスの個体に衛星を通じてコンタクトしようとした時に受け取った「拒否信号」のうちから、中継基地を割り出すことができた。ヘラ嬢が居なくなってから、3日が経った。

私はそのあたりの地形マップを、指先からホログラムとして映し出していたのだ。

私は、我ながら子供のような悪戯をしてしまったなと思いながらも、マリセルに向かって笑ってみた。

「私もヒューマノイド型ですから、このくらいのことはできます。しかし、いかんせん遠すぎる…ここは今は分かたれた西ヨーロッパ大陸の、しかも、世界連に没収された地です…」

するとマリセルはびっくりして、急に背を正した。

「そうでしたか、わたくしはつい、アームストロング殿をロボットではないと思っておりました」

そのマリセルの素直な様子に、やっぱりちょっと申し訳なかったなと思いながらも、私は片手を上げる。

「いえいえ、私は気にしていませんよ」

「それにしても、バステマを始め、お出ししたお食事を、お召し上がりになっておりましたが…」

「ええ。私は警察用のヒューマノイドですから、人間に紛れての捜査活動も命じられます。その時のために、こうしていろいろと、人と同じことができるようにと設計されたのです」

「それは、大変失礼を致しました」

「とんでもない。おもてなしに感謝いたします。実は、いつ気づくかなと思って、猫をかぶっておりました。こちらも、申し訳なかった」

「いえいえ、そんなことは…」

私たちは、お互いにちょっとくすぐったいような仲間意識を持ち、少しマリセルとの距離が縮まったように思った。

でも、マリセルはふっと、とても不安げな顔をする。

「それにしても…世界連に没収された地、ですか…どうりでお嬢様の右腕に植え込まれたパーソナルチップも、どこにも反応しないはずです…」

初めから、引っかかってはいた。

人間を探すのなら、わざわざ連れ去ったロボットの位置から割り出すようなことなどしなくていい。

生まれた時からその人物の腕に植え込まれているパーソナルチップを、ロボットの位置と同じように、衛星で追跡すれば済む話だ。

それもできない、ロボットの位置もわからない。そんなのはおかしいと思っていた。ロボットなら追跡に対して拒否信号は遅れるが、パーソナルチップにはそんな機能はない。

でも、衛星追跡など届かない世界連が個別に所持している地なら、それも納得できた。

「ええ。問題はどう連れ戻すかです。この土地は今では、シップで近づこうにも、自動追撃されてしまいますからな…」

世界連の独自所有の地については、何人たりとも立ち入り禁止で、もしシップで近づこうとすれば撃ち落とされてしまう。

それは、過去に“テロリスト”と呼ばれた輩が、世界連がほったらかしにしていた広大な草原地帯の地下を根城にして世界中を荒らしまわり、最終的に大戦にまで広がったことがあるからだ。

致し方ないとは言え、解決策としては少々過激すぎるのではと、私には思われるのだが…。