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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第45話 アメリカへ






「お前さんらには何も知らせてないからな。初めから話そう」

そう言ってロペス中将は、威勢の良い身振り手振りをまじえながら、こんな話をしてくれた。

中将曰く、ターカスは軍での作戦行動中に敵軍の捕虜となった。でも、ターカスを奪い返しに敵軍司令部に攻め込んだ時にはターカスは居なかったのだと。中将がホワイトハウスに攻め入った時、初めてターカスが姿を現し、彼は自治区大統領に熱線を向けていたと。

私は、それらの話を、ターカスの身に起こった事として飲み込んでみたけど、やはり戦争とはあまりに日常を壊すのだと思わざるを得なかった。平然と話し終わったロペス中将がまるで悪人であるかのように見えた程だ。でも、私はすぐに気を取り直して、こう言った。


「つまり…ターカスはどこかへ消えた時があったという事でしょうか…?」

中将は細かく一つ頷く。

「そうだ。そして、その時に敵軍からもう一人人員が消えていたと、ターカス奪還に向かった班からの報告があった。その事は記録に残ってる」

私は、そんな話を聴いて良かったのかと危ぶんだが、中将が話しているのだから大丈夫だろうと思っていた。

「そのロボットの名前は“エリック”。型番は知らない。ただ、敵軍のロボットから聞き出したらしい」

「えっ…エリックですって!?」

中将はまだ驚いてはいなかった。ありふれた名前だからだろう。

「なんだ、知ってんのか?そんなはずねえよな?アメリカ自治区軍だぞ?」

私は「まさかそんなはずがない」と思いながらも、ターカスのこれまでの話をしようとして、少し身を乗り出した。

「実は、中将…私達も、まだ話していない事があります」


“ターカスは恐らく自由意志を持つべきロボットであろう”

“亡くなったヘラお嬢様の弟の代わりにするつもりでプログラミングされたロボットだ”

“ごく最近、“エリック”というロボットに連れ去られてテロリズムに巻き込まれ掛けた”

私は、以上の事をロペス中将に話した。中将はとても驚いていたが、納得出来なくはないようだった。


「はあ…まさか、そんな事情の深いロボットを借りたなんて思ってなかったぜ」

「す、すみません…」

訳も分からず、私は謝った。でも、彼はこちらの話に大いに関心を示したようで、自分の膝に寄りかかって、こちらへ近づいた。

「そいじゃ、“エリック”の型番は分かるか?以前の居住地や、スタイル、設計図なんかは?」

あまり期待をしていなかったのか、私が次にこう言っても、中将は落胆もしていなかった。

「さあ…それは、ターカスを捜索してくれていた、捜査員の方しか、ご存知でないと思います…」

「そうか。捜査員の名前は憶えているかな?」

「え、ええ。ジャック・アームストロング氏、アルバさん、メルバさん、シルバさん、銭形氏だったと、記憶しています」

私がそう言うと、ロペス中将は突然額を片手で押さえた。なので私はこう聞く。

「どうしたのですか?中将」

極まり悪そうに話したがらなかったが、中将は私から目を逸らすためのように俯き、こう言った。

「銭形は、ターカスの仲間達が破壊した。アメリカ自治区軍に徴兵されていたよ。アメリカ自治区出身だからな…」

「そうだったのですか…」


その後、中将は「俺が責任を持って調べて、また連絡する」と言ってくれて、ホーミュリア家を去った。私はターカスにどんな気分かと聞いたけど、「別段、何もありません」と言われただけだった。