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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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“これだ”

ホーミュリア家に赴いて得た情報に、俺の頭に引っかかっていた心地悪さが、答えを得たように思った。要は、“カン”ってやつだ。そんなのはジンクスだとみんな信じないが、この世を全て科学で説明出来るなんて思ってる訳でもねえ癖に、何を抜かしやがる。

と、言う訳で、捜査員を全員集めた訳だが…

「ねえ!ちょっとメルバ!何するのよ!」

「うるっさいなー、さっきから。ちょっとエネルギー借りてるだけだろ。俺はさっきまで出先だったんだよ」

「携帯用のチャージャーを使いなさいよ!」

「わざわざそんな物持ち歩かねえよ!たった3地区先だぞ!?」

「ふ、二人とも、少し静かにした方が…」

二人の子供ロボットが言い争っていて、後の一人は止めたそうにしているのに、なんの役にも立っていない。俺はそんなのに付き合うのが面倒だったので、黙って“アームストロング”を待っていた。そこへ、子供ロボットがやっと俺に構う。

「ねえ、ところでロペスさん、今日は何の用なの?」

思わず俺は子供ロボットを睨んだ。

「あ?」

少したじろいだように見えたが、アルバは臆せず俺に話し掛け続ける。

「だから、何の用?私はアームストロングさんに呼ばれただけよ。あなたもそうなの?」

ポリスを代表する武力の高いロボットである“アルバ”、“メルバ”などは、国の共有財産かのように扱われている。だから俺達は何度か会った事もあったし、こいつらは鼻っ柱が強くて癇に障るんだ。

俺は、だーっと大きく溜息を吐き、そいつらにこう言ってやった。

「俺がアームストロングと君らを呼んだんだ。“ターカス”について、君達に二、三、質問をさせてもらう」

「えっ?ターカスって…」

驚いているアルバを放っておいて俺は端末を取り出し、レックのメニューで録音を始める。

俺達は互いに、まず自分の名前をレックに吹き込んだ。それから話が始まる。俺は、“ターカス”と“エリック”が、アメリカ自治区軍でどんな動きをしたのかについて話した。子供達はみな、驚き、意外だったようで、頬を引きつらせていた。

「エリックの情報をお伝えすればよいのでしょうか」

そう言ったシルバは、仮想ウィンドウを片目の前に映し出し、手元に出現させたキーボードに、パスコードを手入力していた。俺はこう言う。

「そうだ。一緒に司令部を出たかは判然としないが、元から繋がりがあるなら、何らか、二人が何かを示し合わせた可能性は高い。それについての情報を知りたいんだ」

すると、シルバは一度息を吐く。眠らせていたシステムの起ち上げだろう。

「承知しました。それでは、まず、“エリック”の正式名称です。「Ψ-AH56602」。こちらが設計図。彼は全く一般的なメイドロボットです。だから僕達は驚いたのです」

そう言ってシルバがこちらに見せたのは、確かに何の変哲もない、ヒューマノイドタイプの設計図だった。

「どういう事だ…?」

「これは僕も疑問でした。エリックは、戦術ロボットのターカスを連れ去る事など出来ないはずだった。その謎の究明を待たずして開戦となったので、訳は分かりませんでした。今、それを明らかにするべきかもしれません。あるいはエリックは、軍事的改造を施されたのかもしれないと、僕は思っていたのです」

「一般のヒューマノイドロボットに誰がそんな事を?」

そう言って凄むような目を作ってみても、シルバは薄く唇だけで微笑む。

「それをお調べするのが、貴方の仕事かと思います」

「参ったな…」




俺はその晩、アメリカ自治軍を監視させている子飼いへと通信をしていた。向こうさんが気付かない内に終わらせるため、いつも2分に限っていた。

“アメリカ自治区軍所属、“Ψ-AH56602”について、情報求む”

すると、こう答えがあった。

「その者、12月23日、合衆自治区軍、退役」

俺は、その次の休暇を利用し、アメリカに飛んだ。