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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第43話 残されたモノ






私は、一瞬背筋が凍った。合衆自治区大統領の死という、極端に危機的な状況に相対した事で、恐怖すら覚えた。だが、相手がGR-80001だったので、すぐに警戒を解き、話し掛ける。

「お前は…もしかして、ターカスか?」

そう言うと彼は「ええ」と言い、指先に尖らせていた熱線砲を収める。大統領は眉間を正確に焼き抜かれ、死んでいた。ターカスはそれを顧みもせず、私に向かって頭を下げた。

「ロペス中将、任務を言い渡されてもいないのに、勝手な真似をして申し訳ございません。ですが、合衆自治区分司令部に戻った時、シルバから「メキシコシティ司令部は燃えた」と聞き、急ぎ敵軍の中枢を破壊せねばと思い、こうしました」

それはきちんきちんとした口調で、はっきりとしていて、それまでのどこか煮え切らなかったターカスの態度とは違っていた。

“自分の立場を自覚したって事か…何があったか知らないが…”

私も自分の立場を思い出し、彼に向かってこう言う。

「目的を達成出来た事は評価しよう、ターカス。だが、お前の奪還のために、A班は負傷ロボットが出た。お前のせいで自軍に被害が出ていたんだ。その最中に一人で先走るなんて、正気の沙汰じゃない。なぜ私達を待たなかった」

ターカスは少々言い淀んだが、すぐにこう言った。

「警備やロボット数をスキャンしましたところ、自分でも突破可能と判断しました」

私はまた、苦い気持ちがした。“こいつら”と向き合っていると、いつもそうだ。正しくて、否定しようがない事しか言わない。仕方なく、私はターカスから踵を返した。

「出るぞ。ここもすぐに危なくなる。いいか、ターカス。軍内での単独行動は、厳禁だ。覚えとけ」

「申し訳ございませんでした」



結果として、メキシコ自治区軍は勝利し、自治権は保持された。一体なぜ、今さらになって合衆自治区が攻めて来たのかは不明だが、彼らは負け、トップの首はすげ替えられた。

ターカス達は元居た家庭に戻す方針だったので、エンジニア達は、彼らのスケプシ回路から、軍内部の情報のみを削除した。それで済んだはずだった。

しかし私は、アメリカの進軍によってメキシコから何が奪われたのかがまるで分からない事で、落ち着かない日々を送っていた。