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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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目の前では、ターカスがバラバラにされてしまっていた。オールドマンは驚くべき早さでターカスを解体していったのだ。

「おーおー。奴さん、ずいぶんと部品が多いんだな」

オールドマンはニヤッと笑って、途中からしていたゴーグルを引き上げる。

「こいつは戦術ロボットじゃ。要は、小さな艦隊じゃよ。部品は多くなけりゃ」

「そんなもんかね」

中のネジを一本摘まみとってから光に透かし、戻す。すると、オールドマンはこんな事を言った。彼は、ターカスの頭あたり、バラバラになった部品へと、異常な程尖った目の光を向けていた。

「スケプシ回路に、通常であれば無い部品を一つ見つけた。それを抜き去れば、恐らくこいつは自由意志など無くなる!私はそれを丹念に研究させて頂くんじゃ!こいつは木偶の坊で帰せばいい!誰も気づきなどしない!どうじゃ!」

アッハッハと笑うオールドマンに、俺も付き合いで少し笑って見せた。

「いいんじゃないですか」

「そうじゃろ!そうじゃろ!」

“自由意志、ねえ。そんな面倒な物と、こいつはおさらばってワケか…”

俺は、オールドマンがターカスの頭の辺りから一つの丸い部品を抜き取るのを見ていた。




“ロペス中将、シルバです。ニューヨークシティ司令部に向かっていますが、敵軍の爆撃を避けるので、少し時間が掛かります。そちらはどうですか”

通信端末の向こうからは、気に入らない平坦な声がした。

「もう着いてる。GR-80001達と、潜入中だ」

“失礼しました。それでは、ご武運を”

「ああ」

シルバとの通信は切れ、私達は、誰も居ない通路を、黙って屈んで進んだ。しかし、おかしい。

敵軍の司令部の中なのに、こちらの通信端末が使えた事。声を出しても音声認識システムに引っかからない事。まるで、このホワイトハウス司令部がもう死んでいるかのようだった。

私達は慎重に歩みを進めたが、それを馬鹿馬鹿しいと笑うように、要所要所にも、誰も居ず、途中から、壊れたロボットや、アメリカ軍将校の死体が転がっていた。

「どうなってんだ、こりゃあ…」

私は、廊下に転がっていた将校の死体を調べる。彼は眉間を正確に撃ち抜かれ、死んでいた。しかし、銃弾ではないらしい。銃弾ならもっと大きな穴が開く。

「先へ進みましょう中将。これなら、大統領も殺せるかもしれません」

「あ、ああ…そうだな…」

“おかしい…何が起きている…?”


私達が思い切って本司令部の会議室を開けると、その場で話し合っていたのであろう将校達は、全員死体になっていた。薄気味悪くなったが、そのまま大統領の執務室へ進む。

その時点でくぐってきたどの扉も、電子ロックが外れていた。まるで、誰かが私達のために道を開けたようだった。


「じゃあ、行くぞ」

「ええ。お気をつけて」

私は、後へついてくるGR-80001に頷いて、大統領執務室の扉を両手で引き開けた。

「ええっ!?」

そこには、今正に絶命したのであろう大統領と、大統領へ指先の熱線を向けていた、GR-80001が立っていた。