メイドロボットターカス
部屋の中には、黙ったままのエリックと私が残された。私はエリックを見詰めたが、彼はつまらなそうに俯いているだけに見えた。
“ああ、すべて忘れているのか…”
私は、かつての友と思っていたエリックを悲しい気持ちで見ていた。だが、彼はあるところですっと顎を上げてこちらを見下ろすと、にやにやっと笑った。
「よう。ヘマしたな?」
私は、エリックの様子があまり前と変わらない事に驚いたが、彼の記憶はすべて書き換えられていると思っていた。だから、彼が私の拘束バンドを解いているのを見ても、“これから解体され、私は研究されるのだろう”としか思っていなかった。でも彼はそのまま部屋を出て行き、すぐに戻ってきた時には、私の両腕両脚を持っていた。
「エリック!?」
私は驚き、そして喜んだ。
“私の腕と脚が揃えば、私は自由になれる。そうしようとするエリックには彼の意志が残っていて、軍に屈服などしていなかったんだろう!”
「大声出すんじゃねえよ、見つかるだろ。とは言ってもな、俺がお前の腕と脚を持ち出したのはすぐにバレる。早く抜け出すぞ」
「ええ!ええ!」
私は、エリックに早く話を聴きたくて、うきうきとした気持ちで二人で廊下へ出ようとした。エリックが本当は何者となっているのかも知らずに。
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎