メイドロボットターカス
まるで虫が地面を蠢くように人々が地上を逃げ惑っている。私は、その上空200メートル程を飛びながら、地上へ向けて熱線を発射しようとしていた。成功すれば半径50メートルが灰になる。
“自分はなんて恐ろしい事を!”
そう思って躊躇っていたが、いよいよ覚悟を決めて右手のひらを開き、私はそれを人々に向けた。その時だ。
“なぜそんな事をするのターカス!いけないわ!”
お嬢様が耳元でそう言っているような気がした。それで私は一瞬の判断が遅れ、近づいてくるエネルギー体の振動音を聴き逃してしまった。
気が付いた時、私は動けない体を地上に横たえ、傍で誰かが話しているのを聴いていた。それから耳元でロペス中将の怒鳴り声がする。
“ターカス!返事をしろ!何がどうなってる!”
私のスケプシ回路はまた停止し、私は真っ暗闇の中で完全に沈黙した。
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎