メイドロボットターカス
第36話 再びの別れ
「わたくしを…前線にですって!?」
「そうだ。さあ、手をこちらへ」
そう言ってロペス中将は恐らく軍用のコードリライティングを差し出した。私は首を振る。
「お断りします!わたくしはメイドロボットです!戦闘などしません!」
ロペス中将は首を傾げてから元に戻すと、「ククッ」と笑った。そしてこう言う。
「まさしく報告通りだ。君は通告に応じない事が出来るロボットなんだな。それならば交渉をしよう」
私は中将に言われた事の意味がよく分からなかった。今の時代なら、ロボットでも意思決定の自由位はあると思っていたからだ。
中将は腕を組み、顎を引いて私を見る。
「ここ、メキシコ自治区の中枢へは絶対に入らせてはいけない。それは分かるな?」
私は、頷いたり首を振ったりはしなかった。なるべく興味がないように見せかけた。
「そして君は唯一、一般に残っていた13体の兵器の内の1人だ」
話の帰着がどうなるのかは私は分かっていた。それでもお嬢様のお傍に居たかった。
「君達が出てきてくれれば、勝てる可能性は高い。メキシコには軍費が少なかった。アメリカと戦えるほどの兵器など持っていない。でももう奴さん達はこちらへ向かってる。一刻の猶予もない。それに、私だって君より弱い。そんなのは当たり前だ」
私はまた抵抗する気力を失くし掛けていた。
“メキシコを守れなければ、お嬢様が…”
「この国で一番強い兵器は君達なのだ。使わない手はない。分かったら家族の者に別れを言って車に乗れ。待つのは3分だ」
そう言って中将は返事も待たずに外へ向かって歩いて行った。私は仕方なく避難所の奥へ引き返す。
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎