メイドロボットターカス
「お嬢様、わたくしは給水所でお水をもらって参ります。マリセル、少しの間ここを頼みます」
「わかりました、ターカス」
「お願いね」
避難所の人込みの中でも住民が疲れないようにと、それぞれ割り当てられた面には高い衝立が立て回してあり、私はタンクを抱えてそこを出た。その時だ。
私の前からは、見知らぬ背の高い男性が歩いてきた。彼は私の行く道を塞ぐように目の前に立つ。
「君がターカスだな?」
そう聞かれて彼を見ながら、「ええ、そうですが」と返す。私ははっと気づいた。
彼は軍人が着るような折り目正しいスーツを着込んでいた。胸元に勲章はないが、階級を表すバッジが付いている。
彼はスーツの胸元から黙って懐中時計を出した。どうやらそれは通信端末をアンティーク調に作った物のようだ。ずいぶんと高価そうだった。彼の端末からは、私の設計図がホログラムで示される。私は驚いた。
「一体何の御用です?あなたはどちらの方なのですか?」
彼は私を見詰めこう言い放った。
「私はメキシコ自治区軍、中将の、ダグラス・ロペスだ。君を徴用に来た。君にはこれから前線へ行ってもらう。これは義務だ。手を差し出したまえ」
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎