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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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「なあ、銭形さん。アンタはどこなんだ?」

俺は、前を歩く銭形にそう聞いた。

銭形は、完全な戦闘用兵器だ。今回の開戦にも、関わるに違いない。

“おそらく合衆自治区に呼ばれたんだろうな”と俺は思った。銭形からは、素っ気なくこう返ってくる。

「秘匿事項だ」

“やっぱりか”

俺達は、ポリスメキシコ自治区支部の職員だ。その俺達に言えないとなれば、要は銭形は「戦う相手」なのだろう。

もちろん、俺達はポリスの職員なのだから、戦闘に参加などしない。自治区内での、住民の警護に当たる。でも、銭形には充分過ぎるほどの戦闘力がある。どこかで出くわせば、俺達は真っ先に破壊されるだろうと思った。

「アームストロングさん、アンタは?」

アームストロングは、合衆自治区にある、ポリス本部の職員だ。もしやと思っていた。

「その質問に答える義務はない」

“アンタもかよ”

多分こちらは、アメリカでの何らかの任務に就くんだろう。戦闘ではないにしても。

俺達はその時、ホーミュリア家の敷地に停まっていた3つのシップの内、2つに分けて乗り込み、黙って別れた。

ポリス専用艇を操縦するロボットは、「シートベルトをお締め下さい」と愛想のない声で言う。俺は、横に居たシルバにこう聞いた。

「銭形は前線か」

「おそらく」

「俺のところには、住民の保護を自治区A地帯でするよう通告が来た」

「僕は、市民に向けての情報収集班へ、参加が義務付けられました」

「…そうか」

シップが飛び立ち、ふわりと浮遊する感覚に、俺は身を任せていた。




「お嬢様、わたくしは給水所でお水をもらって参ります。マリセル、少しの間、ここを頼みます」

「わかりました、ターカス」

「お願いね」

避難所の人込みの中でも住民が疲れないようにと、それぞれ割り当てられた面には高い衝立が立て回してあり、私はタンクを抱えてそこを出た。その時だ。

私の前からは、見知らぬ背の高い男性が歩いてきた。彼は、私の行く道を塞ぐように、目の前に立つ。

「君が、ターカスだな?」

そう聞かれて彼を見ながら、「ええ、そうですが」と返す。私ははっと気づいた。

彼は、軍人が着るような折り目正しいスーツを着込んでいた。胸元に勲章はないが、階級を表すバッジが付いている。

彼は、スーツの胸元から、黙って懐中時計を出した。どうやらそれは、通信端末をアンティーク調に作った物のようだ。ずいぶんと高価そうだった。彼の端末からは、私の設計図がホログラムで示される。私は驚いた。

「一体何の御用です?あなたはどちらの方なのですか?」

彼は私を見詰め、こう言い放った。

「私は、メキシコ自治区軍、中将の、ダグラス・ロペスだ。君を徴用に来た。君にはこれから、前線へ行ってもらう。これは義務だ。手を差し出したまえ」