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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第4話 ターカスの秘密






私は「お嬢様を探して欲しい」との依頼で、ホーミュリア家に招かれて、メイドにお茶を振舞われていた。

過去に「インターポール」を前進として作られ、各国の法整備と共に全世界に支部を持つようになった「ポリス」の「次長」、それが私の立場であり、大きな責務だ。

私はアステカ高原のあるメキシコシティに住む貴族の娘が居なくなり、3日ほどもらっていた休みを返上して、すぐに大きな決断を下せる者、すぐに下部組織を動かせる者としてここに呼ばれ、捜査をすることになった。


お茶はいい。人類が何万年と繁栄を重ねた今でも、暇を持て余せばこれに頼る。だが、今回は仕事なのだから、高級茶や、甘くふんわりした焼き菓子“バステマ”にも、あまり構ってはいられなかった。


「それで、ヘラ・ホーミュリア様はいつ消えたのです?」

「昨日の夕でございます。アームストロング殿。わたくしがヘラお嬢様が居なくなったことに気づいたのは、17時32分でした」

この屋敷には、どうやらその令嬢以外は、メイドロボットしか居なかったらしく、私はさっきからずっと「メイド長」らしき者と話をしていた。

お茶とお茶菓子を用意してくれた者は、メイド長より背丈は小さいロボットだったが、そちらは旧式のようだ。

「行き先に心当たりは?」

「まったくございません。お嬢様はこのお屋敷をほとんどお出になったことがないとの情報を、わたくしは引き継いでおります」

「ほう、ではなぜ、今になって急に家出を?両親が居ないさみしさからですかな?」

すると、しばらくの間、「マリセル」と名乗ったロボットが下を向く。おそらく、「お嬢様」の胸の内を推し量ろうとしているのだろう。

「わたくしにはまだよくわかりません。でもおそらく、お嬢様は「ターカス」という、元メイド長のロボットとお出かけになったきり、昨晩遅くなっても、今も、お戻りになりません」

「「ターカス」…その人は何がお出来に?」

するとまたマリセルは言い淀み、ややあってこう言った。

「ターカスは旧式ロボットですので、戦場に出るための機構まで備わっております。平和な世が盤石となる、ずっと前に開発されたものなのです。ですから、いざとなれば位置情報システムに掛からない移動もできます…」

“旧時代の遺物か…これではお手上げだ”

私はのっけから、少々厄介だなと思った。

もしこれが連れ去りなら、向こうは「武力」も備えているということになるのだから。

「今、ターカスの移動情報の途中までをお見せしましょう」

そう言ってマリセルは、応接間のテーブルの上に仮想スクリーンを出した。地図の上をポインターがだんだんと動いていく。

「星の門…まさか!」

ポインターが止まった「星の門」は、政府高官くらいでなければ、急遽の通過は禁じられている。だったらおそらくここを通ったわけではないだろう。

「ええ、ここをお嬢様がお出になったということは、考えづらいと思います」

「では、一体どこへ…」

「このあと急にターカスの移動情報は削除されており、それでわたくしたちは、アームストロング殿をお頼りしたのでございます」

「そうでしたか…ではまず、ターカスについて調べてみたいので、同じ型のロボットの図面を取り寄せてください」

「少々お待ちください。今、ウェッブ上からお取り寄せ致します」