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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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やがて世界連暴力犯対抗室の専用艇というシップが地面に降りると、タラップが下ろされた。それは斜めになっていたけど、ターカスの作ってくれた歩行器にとっては、そんなのはなんでもない。私は、それに気づいた時も、早くターカスに会いたいと思った。

でも、下に降りて辺りを見回した時、私は「えっ?」と声を上げてしまった。

だって、その辺りには石や岩しかなくて、ポリスの建物なんかどこにも見えなかったから。私は、専用艇から降りてくるマルメラードフさんに、こう聞いた。

「マルメラードフさん、目的地は地下なの?」

すると彼はちょっと笑って、片手を顔の前で払う。

「いえいえお嬢さん。こんな所にターカスは居ませんよ」

「えっ?だってターカスの所へ行くんでしょう?」

マルメラードフさんは尚も面白そうに笑っている。私は、前に彼が庭にある薔薇の影で、誰かと通信をしていたのを思い出した。そしてそこから離れようと思って歩行器を動かそうとした時、マルメラードフさんは私から歩行器を引ったくり、私を地面へと突き飛ばした。

岩盤の上を転がって、私は体のあちこちを打った。

「痛い…何をするのよ!」

起き上がって彼を詰ると、彼はまだ笑っていて、自分の後ろにあった崖の下へと、私の歩行器を放り投げた。

「ちょっと!いい加減にしなさい!何を企んでいるの!?わたくし、許さなくってよ!」

そう言っても怖気づくこともなく、マルメラードフはこちらへ近寄ってきて、さも可笑しそうに笑った。私はそれを睨みつける。

事態はもう最悪の方向へ進んでいて、自分はこれから殺されるか、何かの取引に使われるだけかもしれないと分かっていたから、私は決して彼から目を離さなかった。思った通り、彼は私の手を引っ張って体を引きずり、崖の際まで歩いていこうとした。私はなんとか抵抗したけど、通じるはずがない。

「何をするのよ!卑怯者!ふざけないでちょうだい!」

「至って真剣です、ヘラ嬢」

「なお悪いわ!」

「おや、この状態で口答えを?」

彼はそう言った時、手を引っ張ったまま、私の体を崖の向こう側へと押し出そうとした。

「やめて!やめなさい!ええい!」

私は、何度か崖の際で揺らされて脅かされ、死ぬかもしれないと思った時、彼が憎くて憎くて堪らなくなった。だから、自分が見た事を言ってしまおうと思って、こう叫ぶ。

「あなた、わたくしの家の庭で通信をしていたでしょう!“エリック”の始末を“連中”に委ねるとかなんとか!自分の手は汚さずにやろうって魂胆なのね!卑怯で薄汚い人だわ!」

「いいえ。今まさに、自分の手を汚そうとしているじゃありませんか」

「その口を閉じなさい!よくもそんな事を!」


私達が言い争っていた時、急にその辺りに“ドシン!”という衝撃が走って、気が付いた時には、私は崖の際から零れ落ちて、真っ逆さまに下へと落ちていた。

“死ぬわ!”

それは確かにわたしくしの胸に響き、心がパキパキと割れて砕け、絶望に涙を流す間もなく、私は地面に激突すると思っていた。

“悔しい!悔しい!こんな!こんな事って!”

すると、私の体は何かに支えられてふわりと浮き、また気が付いた時には、私を呼ぶ声がした。

「お嬢様、お待たせ致しました」

ガラガラと低く割れた、機械音声。私を包む、硬い体。私は大きく息を吸い、待ち侘びた彼に抱き着いた。

「ターカス…!」