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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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私がお昼寝から目覚めて居間へ行くと捜査員さん達は全員帰って来ていて、銭形さんやメルバ君はお茶やお菓子を黙々と口へ運んでいた。シルバ君だけはいくつもいくつもの仮想ウィンドウを開いていて、なおかつそれがよく見えないように、すりガラスのようなシールドでシルバ君と私達は隔たれていた。

「アームストロングさん、お疲れ様」

そう声を掛けても、アームストロングさんは何か酷く思い悩んでいるような顔をしていて、「お嬢様」という一言の返事を寄越しただけだった。

私の傍にはマリセルがついていて、テーブルに就いた私に「ムスカをお召し上がりになりますか?」と言い、ミルフィーユにジャムを包んだようなケーキを勧めてくれた。

「ありがとう。頂くわ」

そう言いながらも、私は捜査員さん達の様子を窺っていた。

“どうしたのかしら…なんだかみんな緊張して、考え込んでるみたい…”

ムスカは美味しかったけど、私は一口だけでそれを置いてナフキンで口元を拭い、歩行器を銭形さんとアームストロングさんが並んで座っていたソファの前へ動かした。

途中で彼らは私に気づいて顔を上げたけど、顔を逸らして俯いた。まるで私に言えない事を隠しているように。私は不安になり、こう聞く。

「ねえ…何かあったの?」

アームストロングさんは、「いいえ、お嬢様」と返事をする。

「ターカスの事かしら?」

そう言うと銭形さんが「違いますよ、ご安心を」と返した。

「でも…なんだか二人とも、いいえ、みんな悩んでるみたいだわ。わたくしは心配なの」

私がそう言っても、アームストロングさんに「大丈夫ですよ、ちょっと捜査が難しい局面なのでね」と言われただけだった。

「あれ?そういえば、マルメラードフさんは?」

ふと気づいたのでそう言うと、メルバが「おっさんなら寝てるよ」と言った。

「まあ…捜査は昼夜を問わなかったものね…」

「彼は人間だからな、そりゃそうさ」

飄々とそう言ったメルバ君も、どこかにやり切れない気持ちを抱えているように暗い面持ちだった。そこへシールドの向こうでシルバ君が振り向く。

「アームストロングさん、分かりました。それからホーミュリア様。申し訳ないのですが、個人情報に関わりますので少々席を外して頂けないでしょうか」

私はそれを聴き、慌てて「分かったわ、ごめんなさい」と部屋を出た。




「シルバ。何が分かったんだ」

アームストロングはシルバの脇に立って、目隠しの外されたウィンドウを見詰めていた。そこには様々にグスタフ総監とケリー警視監のプライベートにおけるデータが出されている。

「総監の金遣いについてです」

「金遣い?」

そこでシルバは一つのキャッシュサービスのプライベートページを引き伸ばして、こちらへ向けた。

「これはあるキャッシュサービスからの支払い履歴ですが、グスタフ総監が常に使っているサービスではありません。巧妙に隠されていたアカウントです。それから、この額を見るに莫大とも言えるものです」

そこには、3月31日にアライアンスという不動産会社へ3000万パスカの支払いがされたという記録があった。

「使途は?」

「自宅の購入費の支払いです」

「なぜ自宅の購入を秘匿されたアカウントで?」

アームストロングがそう言うと、シルバは「では次にこちらを見て下さい」と言って、総監のおそらく給与支払い明細をこちらに向けた。

「これは総監の過去4年間の給与と賞与です。ポリスは過去に行った改革で、上役の給与も大幅に削られました。とても3000万パスカの自宅を用意するなんて出来ません」

「バンクからの融資という可能性は?」

「キャッシュサービスアカウントに向けそのような記録はありませんでした。そしてこの3000万パスカは、ある人物からグスタフ総監へ直接に振り込まれた物です」

シルバはわざと言葉を切り間をもたせた。じれったくなり、私は「それは誰だ」と聞く。

「ミハイル・マルメラードフ暴力犯対抗室室長です」

「ええっ!?」