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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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「エリック…」

私は、エリックの「犯罪者となる」という台詞を聴き、なんとも言えなくなってしまった。

彼は、主人を慕うあまり、その報復のためであれば、犯罪者となっても構わないのだろう。多分、そういう意味だろうと思った。

でも、それでは誰も救われない。エリックがする事もただの犯罪で、なんの正当性もないし、死んでいったエリックの主人も、浮かばれはしない。

“やはり止めなければ”

私はそう思った。どうしても、強引にであっても止めなければ、事は最悪の方向へ動く。

私が考えた“大統領を殺されたら戦争が酷くなる”という予見は、おそらく概ね外れないだろう。

そんな事をすればエリックが真っ先に血祭りに上げられ、私達はテロリストとして捕らえられる。その後でどんな事を言ったところで、「テロリストの夢幻」として片づけられてしまうだろう。相手は合衆自治区大統領なのだ。

そしてメキシコ自治区に激しい戦火が上がり、人々は蹂躙され…

そこまでを思い浮かべて、私はエリックが仮想ウィンドウに夢中なのを確かめ、「水素を取り込みに行きたいのですが」と声を掛けてみた。彼はこちらを見ず、「廊下より先は行くなよ、衛星のレーダーに掛かる」と言った。


私は、廊下を歩いていて、その先にある出口の手前で立ち止まった。

“この先に行けば、誰かに見つけてもらえるかもしれないし、お嬢様のところへ帰れるかも…”

“しかし、私達の武力がなければ、エリックが大統領府と闘う事も、ポリスを相手取る事も出来ないだろう…”

“いいや!そもそもそんな事はしてはいけない!”

私は、いつの間にか自分が闘いを肯定している事に気づき、戸惑った。その上で、その思考を逃れてエリックを止める方法を考えた。

“もしくは、エリックの機能を全く止めてしまえば、私は逃れられる。他に捕らえられているロボットも解き放たれるだろう…でも、そうしてしまえば、おそらく戦争は止められない…どうすれば…”

その時、私の後ろから、エリックの声がした。

「水素は充分かな?ターカス、仕事だ」

私はそれに振り向き、仕方なく歩きながら、また“このままでいいはずがない”と考え続けていた。