メイドロボットターカス
「地下…?ターカスは地下に居るの?」
私はマルメラードフさんにそう聞いて、彼に近寄って行った。歩行器が前に着くとマルメラードフさんは私を見て微笑んでくれたけど、その目元はひきつっていた。そしてまたアームストロングさんを見て、彼はこう言う。
「エリックも見つからない、ターカスも見つからない、そして彼らはポリスに出向いて何かを企んでいたらしい…そしてターカスと同じ種類のロボットは全員行方不明…これは、エリックが何らかの活動を起こすかもしれないと私は思うんだがね」
その台詞にアームストロングさんは下を向いてまた顎をこすっていたけど、隣で銭形さんが「確かに」と呟いた。銭形さんはアームストロングさんにこう促す。
「ターカスは、兵器基盤のロボットなのだろう。それならそれを集めれば、今ならどの国にだって盾突く事が出来る。“エリック”が何を考えてそんな事をするのかは後にして、彼らを見つけられなければとんでもない事になるかもしれないぞ。アームストロング」
アームストロングさんは考え込んでいたけど、銭形さんの顔を見てこう言った。
「それは、ターカスを含めテロリストとしての指名手配をするという事になる」
私はそれにびっくりして言葉を失った。
銭形さんは「そうだ」と言った。
マルメラードフさんが「そうするしかないだろうね」と言う。
“違うわ…違うわ!”
私は自分の叫びに胸の中を掻き回され、もう黙っていられなかった。これ以上ターカスがそんな扱いを受けるのには耐えられなかった。
“このままじゃ、ターカスは見つかっても壊されてしまうかもしれない!そんなの絶対に許さないわ!”
「違うわ…」
私はぼろぼろと涙をこぼし、ドレスの膝の辺りを握りしめて、その時はまだ下を向いていた。でも私の様子に周りの大人も注目していたから、私は顔を上げてこう叫んだ。
「違うわ!彼はテロリストなんかじゃない!この家の、メイドよ!わたくしの、一番の友達だわ!そんな事をしたら、わたくしは許しません!」
私は、その場に居た大人全員を睨みつけ、涙を止めなかった。しいんと鎮まった部屋の中には、私が息を切らしている音だけが響いていた。
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎