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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第27話 正体






「衛星の情報で熱源を確認するだけでは、この二人がターカスとエリックとする事は出来ません。でも、ほぼ間違いなくそうです。だからここに問題が生じます。エリックは家庭用ヒューマノイドです。彼ではターカスを捕らえる事は出来ない。そして、エリックに協力者が居た可能性もとても低い」

そこまでを言ったシルバ君の話を、私達は全員で聴いていた。アームストロングさん、銭形さんは不満そうで、マルメラードフさんはいらだっているようだった。メルバ君は下を向いて何かを考え込んでいた。シルバ君は続けてこう話す。

「あるいはターカスが何か弱みを握られたり、エリックがなんらかの装置を使えば可能かもしれません。ですが、今も二人は見つからないので、確かめようがありません。アームストロングさん、これ以上の捜査継続には、手段が足りません」

そう言われて、アームストロングさんは顎を片手でこすっていたけど、顔を上げてから、こう言った。

「出来ないと言うのか、シルバ」

そう言った時の彼は、恐ろしく冷たい表情をしていた。でも、もしくはそれは、彼が深く考え込みながら喋っているからかもしれなかった。

「ええ、これ以上は続けても無駄です」

その確認を終えると、アームストロングさんは私を振り返った。私は、不安で不安で堪らなかった。でも、そこでマルメラードフさんがこう言う。

「待ってくれ、アームストロング君。私は暴力犯対策室の室長として発言するがね」

そう言ったマルメラードフさんは、立ち上がってこちらを向いた。みんなその様子を見ていた。

「彼は戦争兵器だ。それを放置する事は、私には出来ん」

私はその時、「違うわ!」と叫びたかった。よっぽどそう言いたかったけど、メルバ君に見せてもらった、アルバちゃんが壊されていく映像を思い出すと、とてもそうは言えなかった。

「要は、探し方を変えればいい。シルバ君、君は防犯カメラへのアクセスは試してみたのかね?」

「ええ、何度も」

「しかし、新たに映り込んでいるかもしれないじゃないか。継続してそれを探るわけには?」

シルバ君は迷っていたみたいだけど、前を向くとこう言った。

「ターカスの不明から、もう3日は経っています」

「まだ3日だろう?」

まだ何か言いたげだったけど、シルバ君は黙り込んだ。そこで、アームストロングさんが場をまとめる。

「マルメラードフさん、分かりました。シルバ、その線で当たってみてくれないか」

「…分かりました」

後ろを向いてシルバ君が壁にウィンドウを映すと、それはすぐさま何十個ものコマに区切られ、そこにはあらゆる場所の防犯カメラの映像が早送りで流れた。すると、アームストロングさんが私の肩を掴む。そして私は歩行器ごと後ろを向かされた。

「あなたは遠慮して下さい、ヘラ嬢」

“そうだわ、あれはシルバ君だからやっていい事なのよね…”

私はそう考え込みながら、とりあえずは捜査が続けられる事にほっとしていた。