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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第25話 事態の進み






「それにしても、本当に大変な事になりましたな、ヘラ嬢。私はちょっと上司と通信をするので、少々失礼させて頂きますぞ」

シルバ君の出した仮想ウィンドウを見ていたマルメラードフさんは、そう言って席を立った。

「ええ」

私は続けてシルバ君が動かすウィンドウを見ていたけど、あっという間に文字が流れ去ってしまうので、何が書かれているのかはよく分からない。でも、シルバ君にはちゃんと分かっているようで、彼はスクロールをやめる事はなかった。でも、あるところでそれはピタッと止まる。

そこにあったのは、マクスタイン氏が所有する“エリック”というロボットの図面だった。

「変ですね」

「何が?」

シルバ君は唸りながらうつむいた。何を考えているんだろう。

しばらく彼は考えていたようだけど、やがてこう言った。

「“エリック”の仕様は、まったく普通の家庭用ヒューマノイドです。武器も内蔵されていない、飛行すら出来ない。それでターカスを追い詰めて拉致するなんて、無理なはずです。だから、過去都市ケルンに彼の部品が落ちていたのは、不自然なんですよ」

私は話を聴いてちゃんと理解が出来たけど、「じゃあどうして」という質問には答えられない。

「そうね、変ね…」

シルバ君はその後、考えながら別のデータを覗こうとしたみたいだったから、私は退屈になったし、マリセルはその時居間に居なかった。

“そういえば、マルメラードフさんの帰りが遅いわ。通信にしたって、これまではここでしていたのに…”

私はその時、何かをピンとひらめいた。それは、こんなような事だった。

“もしかしたら、何かターカスについての大きな秘密があって、マルメラードフさんはそれを隠すために、私の聴こえないところで通信をしているのかも!そういえば、アームストロングさんも、私に黙っている事があるようだったし!”

そう思うと私は居ても立ってもいられなくて、仮想ウィンドウに夢中なシルバ君を置いて、そーっと居間を出た。


居間の外の廊下では、人の話し声は聴こえなかった。いつもの通り、屋敷は静まっている。でも、人影を探して通路をいくつか折れた時、ぼそぼそとマルメラードフさんの声が聴こえたから、私は廊下の柱に隠れて、声のした方を見やった。それは、中庭の薔薇の影だった。

彼は何事かを真剣に話していて、どうやら敬語で喋っているみたい。

“何を話しているの?”

私は歩行器を少しだけ前に進めて、柱から耳だけを出す。すると、途切れ途切れにだけど、こんな話が聴こえた。


「ええ…はい、大丈夫です。あなたのお手を煩わせるまでもありません…はい、承知しております、“エリック”の始末は必ず…装う必要もありません、“連中”が勝手にやってくれるでしょう…」


““エリック”って、マクスタイン氏のロボットの“エリック”かしら?“連中”って、誰なの?”


私はなんだか、その話を聴いていて、不安な気持ちを感じた。マルメラードフさんが話す調子が、悪い事を考えている人達と同じような気がして。

“ここに居たら、まずいかもしれないわ。そうだ、帰ってシルバ君に相談してみよう!”

そう思って歩行器を翻した時、私の肩を誰かが強く引いた。