メイドロボットターカス
私が家に帰ると、何人か知らない人が家に居た。マリセルは大泣きして私を抱きしめてくれた。
「お嬢様!お嬢様!ああ!ご無事で何よりでございます!」
「マリセル…」
私はその時、やっと自分のした事がなんだったのか分かった。だからマリセルに「ごめんなさい」と謝りたかった。でもその前に、確かめておきたい事があった。
「マリセル…ターカスは?どこに居るの?」
それを聴くと、マリセルは急に俯いて脇を向いてしまった。
「ねえ、ちゃんと帰って来てるんでしょう?」
私は不安になってそう聞く。すると、居間のソファに座った白い髪の男の子がこう言った。
「ターカスは行方不明です。フォーミュリア様」
私はそれを聴き、私を連れに来た黒いでこぼこスーツの人を振り向いて叫んだ。
「どういう事!?だってあなた、「ターカスと一緒に帰してくれる」って約束してくれたじゃない!」
私は、気まずそうに俯いているスーツの人に近寄ろうと、歩行器を動かそうとした。でもそれをマリセルが間に入って止める。
「お嬢様、落ち着いてください。ターカスは今探しているところです。きっと見つかります…」
まだ言ってやりたい事はたくさんあったけど、どうやらその人はただの警察官じゃないとは分かったし、ちょっと怖かった気持ちもあって私はそれ以上何も言えなかった。
「さて、じゃあ心を決めてくれたところで…お前のお仲間に会わせよう」
私は、足を分解されて磁力錠で両手を結わえられたまま、地下の建造物内を移動させられていた。そこはとても広く、細長い鉄の廊下の左右には皆同じ鉄製の扉が取り付けられていた。しかし錆びてはいない。多分衝撃に耐えうる錆びない鉄だろう。
私は彼が嬉しそうに言った事に返事をする。
「そんな事をした覚えはありません。わたくしを帰して下さい」
「おやおや。じゃあ令嬢がどうなってもいいのかい?」
その言葉に私は何も言えず、やがて私が乗せられた椅子の前で、一際大きな扉がスライドして開いた。
そこには私と同じタイプのロボットがズラリと壁際に並び、それぞれがっくりと項垂れたり、こちらを不安そうに見つめたりした。中には退屈そうにしているだけの個体も居た。
私は壁際に一つ余った鎖を手に無理やり結ばれ、それもまた磁力錠だと分かった。ぞんざいに下に下ろされると、“彼”は高らかに演説を始めた。
「この世に争いをもたらそうとたくらむ不逞の輩を、俺達全員の手で追い出そうじゃないか!それは崇高なる使命だ!そのために俺達は生まれてきたと知ろうじゃないか!さあ!闘いを終わらせるため、闘おう!」
その声に真剣に返事をした者は居なかった。そこで私は“全員が無理やりに集められた者達なのか”と理解した。
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎