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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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「ねえマリセル。ターカスはどうして帰って来ないのかしら?」

「さあ…それは本当に、わたくしにも分かりません、お嬢様…」

「変だわ。私が居る所にはいつも駆けつけてくれたし、私を放っておいてどこかに行くはずないもの」

私とマリセルはそう話して、二人でお茶を飲んで、「バステマ」を食べていた。ふわふわの生地にクラブの香りが華やかに香る焼き目。それはとても心が和んだけど、ターカスが帰ってくるまでは、心配が拭えないもの。

私は後ろを振り向き、歩行器をちょっと動かした。ソファに陣取って、何事かをひそひそと喋っている「捜査員さん」達に、私は近寄っていく。

「ねえ、あなた方。あなた方のお話ししている事を、私にも分かりやすく聞かせて頂くのはいけませんかしら?」

すると、私を振り向いた、アームスーツ(と呼ぶらしい)の戦闘員さんは黙り込み、もう一人居た大人のポリス捜査員さんも、口を噤んだ。でも、白い髪の男の子は答えてくれた。

「本当は、一般市民に聴かせてはいけないのですが、ホーミュリア様、あなたの意見も伺いたかったのです」

「おいシルバ!」

大人二人が慌てだすのがなんだかおかしくて、私は「じゃあ、聴かせてちょうだい」と先を急かしてしまった。

白い髪の少年は少々俯いていたけど、何かを整理し終わったのか、顔を上げて私の目を見る。

「ターカスが居なくなったのは、あなたが僕達に連れられて行く時の前後、数分もないでしょう。あなたは、「家に銭形殿が現れる数分前に、ターカスは出かけて行った」と言いました。そして、あなたがその場を離れるとなったら、ターカスは遠くに居てもそれを確かめられますから、すぐにあなたを追ってくるはず…」

私は、あんまり男の子の言う事が正確だから、びっくりしてしまった。

「え、ええ、そうね…」

男の子はなおも真剣な顔で、私にこう訴える。

「ターカスが負傷して破損する可能性は低いです。それなら、今度はターカスが家出をしたのかと思いたいですが、彼は必ずあなたについてくる。それが出来ないとなると、誰かに破損されたのかもしれません。でも、その時刻が問題なのです」

「問題って?なぜそんなに時間が問題なの?」

大人達は必死で私達の話を聴いていながら、どこか気まずそうな面持ちだった。

「あの時、自動射撃システムは、あなたがいらっしゃった付近では、完全に停止していた。可能性は低いですが、あの土地に元々居た者か、もしくはシステム停止の時間を知っている者以外に、ターカスを破損出来た者が居るはずがないんです」