メイドロボットターカス
「ターカス!?また何かあった…の…」
私が振り返った先には、知らない人が立っていた。
その男の人は険しい顔で私とターカスの家に勝手に上がり込み、私へと手を伸ばす。私は床に座り込んでいて立てなかったけど、思わず腕の中のコーネリアを抱きしめて、少しだけ体を後ろにずりずりと下げる。
「ヘラ・フォン・ホーミュリア様ですね」
「…いいえ」
その人は顔を顰めてから、「帰りましょう」と言った。
きっと私とターカスを連れ戻すために、警察の人が来たんだわ。何よ、そんなに真っ黒ででこぼこのスーツなんか着込んで。
「叔母様に呼ばれたの?それともマリセル?」
私はその人を睨みつけて、そう聞いた。すると、その人は急に悲しそうな顔をする。それから私のところまでしゃがみこんで顔を下げ、とんでもないことを言った。
「あなたはターカスに騙されていたのですよ。私たちが捜索した時のあなたのパーソナルチップのステータスは、「死亡」でした。ここを見つけられたのはまったくの偶然です」
何を言っているのか全然分からなかった。だって私は死んでなんかいないんだから、そんな検索結果が出るはずがないもの。ターカスにそんなことができるはずがないもの。
「ターカスはこの家を目視できないように、軍用のステルス化まで行いここを隠したのです。あなたを探しに来た捜査員ロボットをエネルギー停止にまで追い込んだのです」
「すべてはあなたを手元に置くためだ。マリセルはあなたがお亡くなりになったという誤報ですっかり落ち込んでしまっています」
私は、わけがわからなくて首を振った。泣いてしまいそう。そんなことがあるはずがないのに。
「さあ、お屋敷に戻ってマリセルを安心させてあげて下さい」
その人は私に向かって差し伸べた手を少しだけ振って、「手を取れ」と目で訴えた。でも私はうつむいて首を振る。
「ターカスと一緒じゃなきゃ…帰らない」
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎