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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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「マルメラードフさん、ヘラ嬢の遺体は、この付近ですよね」

「ああ。シルバ君が送信してくれたアドレスは、この真下のはずだよ」

ようやく国際連合が射撃システムを20分間だけ止めてくれることになって、マルメラードフとアルバ、メルバは、「旧ドイツシティ過去都市ケルン」の上空を、専用艇で旋回していた。

シップの床は樹脂張りなので下を見渡せたが、茫漠たる草原を大きな川が横切っている以外に、見えるものはない。

「変ね…何もないわ。川はあるけど…」

「マルメラードフさん、少し下に降りてほしい。俺たち二人で、令嬢の遺体を探すよ」

「了解したよ。ではタラップを出すまで、ドアの前に」




アルバとメルバはシップを離れ、川の付近を歩き続けていた。

「それにしても、こんなところに遺体を捨てて、ターカスは逃げたんだと思うか?」

「そんなはずないでしょう?誘拐事件なんだから、いるはずよ」

「そう思うよな。でも…」

「遺体もなければ、ターカスもいない…どうして…?」

その時、アルバの目の奥で、フォーカスが動く音がした。

彼女の意思とは関わりなく、彼女の目が、対象を捉えてスキャンが始まる。

「何よこれ、どういうこと…!?」

それでも、しばらくして、「スキャン不可」を示す警告音が彼女の頭に鳴り響いた。

「どうした?何かいたのか?」

「え、ええ、多分…でも、スキャンできないの。何かに阻まれているみたい…」

そこでメルバはターカスの図面とプログラミングをざっと確認し、「これだ!」と叫んだ。

「奴は軍用の“ステルス化”を使ったんだ!」

それを知るなりアルバとメルバは空中へ飛び立ち、今まさに迫っているかもしれない脅威から離れた。

軍用ロボットには、指定した範囲をステルス化できる技能が施されている。どうりで見つからないわけだ。でも、それなら、向こうからこちらが見えている可能性は高い。

二人はしばらくきょろきょろしていたが、自分たちが攻撃される気配もないと分かると、空の中で立ち止まった。

アルバもメルバも、考え込んでいた。そして、先にアルバが口を開く。

「ねえ、メルバ…私、思いついたことがあるの…」

「なんだよ…」

アルバの言葉に、メルバは少し切羽詰まったような目で振り返る。アルバは真剣に、さっき「スキャン不可」とされた空間を睨んでいた。

「見えなくても、私の目が反応したからには、“何か”はいるのよ。だったら、そこを爆撃でもすれば、ターカスは出てくるんじゃないかしら…?」

「ばっ、馬鹿言え!それじゃ令嬢が…!」

「でも、彼女はもう死んでいるんでしょう?それに、“これ”を仕掛けているのはおそらくターカスなんだから、もうターカスを破壊するか、確保する以外に、令嬢の体を取り戻すことはできない…」

宙に浮かびながらアルバとメルバはそんなふうに話をした。しばらく唸ってから、メルバは頷く。

「やってみよう。でも、爆撃と言っても、ごく小規模じゃなきゃダメだ。もしまだ令嬢が生きていたとしたら、本末転倒だからな」

「マルメラードフさん、聞いてた?」

アルバは、通信システムを通じて自分たちの会話を聞いているであろうマルメラードフに、指示を仰ぐ。

“聞いていたとも。少々荒っぽいが、もうそれしか方法はあるまい”

「オーケー。じゃあ、メルバ。行くわよ」

「オーケー」


「「それっ!」」


二人が両手を差し出し、手のひらから小規模の火炎を放つと、次の瞬間には、そこらじゅうを煙が包み込んだ。

「ちょっとやり過ぎたかな…どうだ?アルバ、何か見えないか…?アルバ…?」

メルバが隣を見た時、アルバは居なかった。ただ、アルバが居たはずの空間を、閃光が過っていくのが見えた。

その閃光の先を思わず目で追うと、空高く吹き飛ばされたアルバが落ちてくるのが見え、それを追いかける銀色の残像が居た。


「アルバ!」