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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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「アームストロング殿は、エネルギー補給はどうするのでしょうか?」

「私はA型永久機関を利用するので、エネルギー補給は必要ありません。それより、そちらにある5冊目の日記を貸してください」

「し、失礼しました。どうぞ…」

私は銭形捜査官からの折り返しの連絡を待つ間、ホーミュリア家前当主の「ダガーリア」の日記を読んでいた。

“それにしても、派遣されるのは、「アルバ」、「メルバ」、「シルバ」の3人と、あのミハイルか…私でまとめられるのだろうか…ん…?”

そのページはちょうど、ヘラ嬢の弟君の妊娠がわかった頃のものだった。マリセルの話では、ターカスがメイド長になるべく雇われてきたのは、そのあたりだったらしい。

“やっと目的のページに…それにしても、初めから終わりまできっちりと日記をつけている…よほどきちんとした性格だったらしいな、前当主のダガーリアは…でもこの次には…”

ページをめくっていくと、案の定そこには、「母体が危険」や、「リリーナの体のことを考えてやめておけばよかった」といった、悲惨な内容が書かれていた。

“辛かっただろう。それで余計に、ヘラ嬢を甘やかしていたのかもしれないな。だが、いつまでも自分が見守っていてやれないとわかってからは、急いで大人にさせてやりたいと考えた…だからダガーリアは、病気で倒れてから、即座にマリセルを迎えたんだろう…それもまた、辛い決断だ…”

その後の日記は、何ページかの空白を挟み、いきなりダガーリア前当主の死の前日と思しき日付へと飛んだ。

確かダガーリアは、過去に私たちポリスへロボットを納めたこともあり、葬儀にはポリス関係者も出向いたはずだ。だから私は日付も記憶している。

“おそらくは妻のリリーナの死がきっかけとなって、日記をつけることをやめたんだろう…それでも、ヘラ嬢が彼の救いにはなっていたはずだ…”

「うん…?」

私はそこで、驚くべき記述を発見した。信じられなかった。日記の最後のページには、中ほどから、こう記されていた。


“…亡き息子につけるはずだった「ターカス」の名と、そしてその魂のプログラムを持ったあのロボットは、どうしても廃棄してしまわなければいけない。そんなことをしたと世間に知れれば、私の家の者は裁判にかけられ、ヘラは不遇に突き落とされるだろう”

“マリセルに少しでもヘラが懐いてくれることを祈って、その役目はマリセルに託そう。私はもう疲れた。ヘラ、愛している。”


「なんということだ…!」

私の口から、ごく些細な驚きの囁きが漏れた。


ロボットに人間の人格の一部をプログラミングする行為は、現代では禁忌とされ、それをした者は一族を含めて厳しく断罪される。

“ターカスは、ヘラの弟…そして、彼はマリセルによって葬られる運命にあったのか!そうだ!人格のプログラミングは、近代ロボットに行おうとしても、シャットアウトされてしまうだろう!だから旧式のロボットでなければいけなかったんだ!”


私は、背後で涼しい顔をしてティーセットを扱い、そしてさっきまで談笑していたマリセルを信じていいものかどうか危ぶんだ。するとそこへドアが大きくノックされる音が響いたのだ。