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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第7話 前当主ダガーリアの墓標





「ターカス!私今日はコーネリアにおうちを作ってあげたいわ!」

「それでしたら、わたくしがご用意いたしましょう」

「いいえ!私が作るの!自分の手で、コーネリアのおうちを作りたいのよ!」

私がある日そう言うと、ターカスはにっこりと微笑んで、「それではわたくしと材料を探しに出かけることにいたしましょう。ランチのあとでよろしいでしょうか?」

「ええ!ねえねえ、今日はなんのカレーなの?」

「お嬢様、毎日カレーばかりでは栄養が偏っておしまいになります。ですから、今日のランチには油分の少ない、「ポトフ」を作ってみました。それをお召し上がりになってください」

「「ポトフ」?それはおいしいの?カレーより?」

「まずはお召し上がりに」

「はーい…」


私は初めて見たけど、「ポトフ」という煮込み料理はとてもシンプルなものだった。なんでもターカスの話では、古く古く、この西ヨーロッパがまだ東ヨーロッパ大陸と離れていなかった頃の料理で、古代のものに特有の長い調理時間が掛かるらしい。

「わたくしには今、時間がたくさんございますから、お嬢様のために、たくさんの手間を掛けて調理をすることができます。きっとご満足いただけることと思いますよ」

テーブルの横で、私の頭の高さまで顔を下して、ターカスはそう言った。

どうやら長時間煮られたらしいお肉に、それから玉ねぎと、じゃがいも、それからにんじん。

“でもターカス…これ、カレーと具材はあまり変わっていないんじゃないかしら?”

私はそう言いたくなったのをぐっとこらえて、「ポトフ」の野菜をナイフとフォークで小さく切って、口に運ぶ。

「…わ!美味しい!柔らかくて、それにとってもいい香りだわ!これは何!?ターカス!」

「今のスパイスにございます、「クラブ」の原種になりました、「クローブ」でございます、お嬢様。これは時代が下るごとに栽培が困難になりましたが、この近在で自生しているものを見つけましたので、少しですが、楽しむことができますよ」

「そうなのね、クラブはこんなに香りは強くないけど…元になったものだからなのかしら…?」

私はもう一度、大きなお肉を一切れ切り分けて、口に放り込む。それはほろりととろけていった。そんなことは初めてだった。

「このお肉も、柔らかくてとても美味しいわ!いつもはお肉と言えば乾燥肉を戻したものしか食べていないから…」

「それも、山で見つけた「ベアー」のものでございます。一度乾燥させることをしておりませんので、とても新鮮で、食味がよいですよ」

「そうなのね…」

私たちの生きる現代では、食肉を扱う「センター」は、世界に3つしかない。そこで生産された肉は冷凍乾燥され、そして世界中の食卓へ届けられるのだ。

「はるか昔には生肉も食べていた」という古代史の授業を思い出して、私は自分たちが本当に恵まれていたのかわからなくなり、それから、少しでも私にこうやって美味しいものを食べさせてくれようとするターカスに、感謝した。

「ターカス、ありがとう」

「いいえ、とんでもございません」