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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第70話 男爵様のプレゼント





私は夕食会のあとで皆様とやっと距離を縮めることができ、マルガリータ侯爵夫人に「お座りになりなさい。お体に障ります」と諫められてソファに座らせて頂いた。かなり年嵩でふくよかな夫人はそれで満足そうに微笑んで「これでいいわ。皆様!順番待ちにはなりますが、お話ができますことよ!」と少し大きく叫んでくれた。それでホールは拍手も生まれたのだった。

順番待ちとは言っても私の周りに数人が集まって、お喋りが始まる。私にとっては半ば接待に近いけど。

「まあまあ、もう少しお寛ぎなさいヘラ様。ここはあなたのお屋敷ですよ」

「そうですとも。それにしても誘拐事件なんて大それたことに巻き込まれたのですから、大勢の前に出てお疲れになりませんか?」

「そうですよ!そういう時は大抵一人になりたがるものです!」

私は一人一人の御方のお話に頷いて微笑んでからこう言った。

「大丈夫ですわ。そのあとに起こったことのほうが大きかったですもの」

すると少しずつ集まってきた人々が自由に話し始める。

「まあ戦争!なんてことかしら!」

「いやいや君、収まってよかったんだ、あんなに早く決まったんだからね」

「それにしたって先ごろの戦いはなんたる屈辱です!司令部は燃やされた!」

「その雪辱ももう晴らしたのだから」

「いえいえ、私はこのメキシコの抱える長年の鬱積について論じようとしているのです!」

「あなた、そんなにいきり立たないで。お嬢様が怯えておいでよ」

「おやこれは失礼を」

私は次々と言われたことに思わず口を開けたままにしそうになったけど、なんとか興味関心がある風に神妙な顔をしていて、わずかな隙間にこう差し込む。

「大丈夫でございますわ。わたくしもメキシコの民ですもの。それでは皆様、メキシコへ参りましょう」

私がそう口にするとみんなびっくりしていたけど、マリセルがピアノを指し示すと特に女性の方々が大喜びした。



マリアッチは華やかかつ抒情的なメキシコの情熱。幾度も裏返しにされたお話が練りこんであるように、楽し気な旋律の深くに強い感情を思い起こさせる。皆様は満足して踊り、途中ちらりと皆様の様子を見ていたけど、男爵様はホールの隅で私を見つめていたようだった。