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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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俺は“イズミ”のエネルギーを気にしてやりながら、数日間ホーミュリア家に滞在した。軍に戻ってから、結果としてイズミは「大変に明晰で、且つ体力のある方です。これほどの研究は協力者が何人居ようともできないでしょう」と述べ、「詳細に記された物からダガーリア氏のパターンがいくつか読み取れますが、単純なパターンではありませんので、文書化にはあと5時間を頂けませんか」と言ってきやがった。

「あ?5時間?なんでそんなにかかるんだよ?お前こそ“明晰”じゃねえのか?」

「ええ、これは大変に複雑な思考なのです。それをこちらの強みにするためにパターン化するのは、少々情報の精査が必要です」

「はーもう…いつ決行になるかわかんねえんだぞ…わかった、やれ。すぐにやれ」

俺はイズミを追い払うように片手を軽く振る。

軍に戻って通常の業務に就いていた、つまり書類仕事に追われていたわけだが、イズミを部屋に置いておきたかったので隅の方で端末を操作させた。

作業中、イズミが二口だけ口を開いた。

「中将、貴方はロボットがお嫌いなのでしょう」

「はあ」

俺はインクでサインを続けながら返した。

「ですが、わたくしが軍に志願したあの時、まるで人間のように選択権を与え、わたくしを受け入れようとしたのは貴方一人でしたよ」

「そーかい。こちとら情報をたっぷり持ってる人手が足りてないんでね」

そう言って机からまた手を振る。どうやらイズミは満足そうだった。しかし俺は本当にそう思ってそうしたんだ。“イズミ”はラロ・バチスタの補佐をしていた。ラロ・バチスタの研究のパターンを知っているのは今やほとんど彼だけだ。大丈夫だ。こちらにはバチスタとホーミュリアがある。俺は初めてデータを信用する気になったかもしれなかった。



翌月の2月15日。わたくしは前回欠席した男爵家の舞踏会にご出席なさった方、ご欠席となった方へのお詫びの招待状を出し終わり、疲れ切って腱鞘炎になりかかった手をさすっていた。

マリセルの話では、腱鞘炎という症状らしい。だってそんなの、こんなに手紙を出す機会なんてないんだからわたくしは知らないわ。現代の人は貴族でない限りこんなにお手紙をいっぺんに出すわけないと思うの。

わたくしは非礼を詫びるのだから、メイドに詫び状を書かせてはいけないこと、たくさんあるけどどうか頑張り通して欲しいこと、当日もきちんと頭を下げて詫びを言うことを、マリセルから教えられた。

もちろん悪いことをしたら謝るのは当たり前だけど、大人って謝り方も正しい方法と間違った方法があって、間違った謝り方をしたら謝ったとは思われないのね。貴族じゃなくても大変だわ。

でも、たくさんの方をおうちにお招きするなんてとても楽しみだわ!むしろこうなってよかったかも!だって、全部が初めてなのよ!

そう思ってオールドペンを置いたわたくしの腕の隣で、ドサッと紙束のようなものがデスクに落とされた音がした。見ると、マリセルがそれを抱えてわたくしの顔を見ている。

「お嬢様、こちらがゲストになる方のお顔とお名前、それからタブーとなっている話題と目されるご事情をまとめたものです。一度目を通して下さい」

「これ…全部…?」

わたくしはそれを指差しておそるおそるマリセルに聞くと、マリセルは「もう少しのご辛抱です。今お茶をお持ち致します」とだけ言った。それで私は首をぐるりと上へ向け、一度だけ「あー!」と大声で叫んだのだった。