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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第64話 人格をもう一つ






私は、捜査室で、ヘラ嬢の事を考えていた。そして、彼女がわたくし「ターカス」にだけ親しく接する理由について情報を検索し、私のスケプシ回路にその情報をコピーしようとした。

しかし、写し取った情報をスケプシ回路にペーストしようとすると、エラー音が鳴り、上手くいかなかった。

“親愛を持って接する対象は一般的に限られ、最も信頼する人物は数人であるのが普通である。それは愛情や友情であるが、知性の高い動物にしばしば見られる愛着行動から始まり、精神が成長していくに従い学び取られる情感である”

私がそれをスケプシ回路に引用しようとする度に、合わないパズルをはめ込もうとしたように、シャットアウトされた。私は、それが不可解であり、また、納得していた。

私は、動物ではない。そして、幼い頃から愛着行動を示し、何者かの手によって育てられた存在ではない。だから、そんな私には、愛情や友情は当てはめられないのだろう。しかし、その事実をなぞる度に、私のスケプシ回路は反抗し、「そんなはずはない!」と意義を唱えた。

ほんの短い間そうしていて、その内にシルバ殿が、オールドマンの居室を突き止めたのだ。




「シルバ、その地図は」

アームストロング氏は、通信を続けながらシルバ殿と話し合っていた。居室が突き止められるなら、人員を増やして突入とする為、即座に各所に指示を出すのであろう。

「僕は承知していませんが、恐らくアクセス権限を全てクリアにした時に得たのでしょう。情報の運用についてはポリスの刻印がされています。ここは、過去都市ケルンの西南220km地点で、地下のようです。衛星には掛かりません」

その時点で、シルバ殿が世界連の情報にアクセス出来たのだろうかと私は考えた。衛星に掛からなくても、世界連であれば追える技術があるはずだ。それは犯罪利用がされないように、内容は公開されていない。

「ではそちらの建造物の造りや、用意されているシステム、あちらに何人何が居るかは」

「オールドマンは感知したようです。ここにある物体は、以前見たオールドマンと熱規模が同じです。それから、エネルギー源の位置と規模としては同じくエリックも見つかっています。そして、ターカスは感知出来なかったようです。完全に電源を落としてあるのかもしれません。他の人員は居ませんでした。でも、ここにもどこかから攫われてきた死体が無いとは言えません。そこまでの探知は不可能ですが、予測しておいた方がいいかと。建造物は堅固な牢獄です。元は世界連が重要犯の収容所として運用していた場所で、セキュリティとしては北アメリカ自治区のポリス本部をやや上回る程度でしょう。ですが、現在利用されているセキュリティシステムは牢獄として運用されていた頃の5分の1に留まります。カメラや熱感知、人感センサーや、音声抽出など、余計なエネルギー利用は限られているので、穴は無いわけではありません。たとえば、こちら」

そこまで喋り、シルバ殿は二本指で映し出された仮想ウィンドウ上の建築地図を拡大した。