メイドロボットターカス
「シルバ、オールドマンの居室は」
「可能性があるとすればメキシコの別の場所か、新事業の行われるアフリカですが、アフリカにそれらしき物はなく、メキシコシティ自治区内には手配が済んでいるので居ないでしょう」
シルバは端末に頻りに何かを入力し続けている。私には早過ぎて読めなかったが、彼なら処理可能なのだろう。
「ねえ、そろそろメルバが戻る頃だわ。私たちも動けるわよ」
アルバはいくらか責任を感じているらしく、しかし彼女もこの事態を重く受け止め、しっかり解決しようと思っているらしい。そこへ、シルバは腰掛けていたリクライニングシートごと私を振り向いた。
「アームストロングさん、この件に関して僕は、バチスタ博士からコードAAAを発せられています。僕は最高位のロックまで外して構いませんか」
私はゴタゴタに巻き込まれていたのでコードAAAの事はそのままだった。だが、それを発した以上、シルバは変わる。
「ああ」
私がそう言うと、シルバの周りには銀色に発光するシールドが現れ、彼の姿は見えなくなった。
その時にシルバが何をしているのかは、我々は永遠に知る事はない。
高度なプログラミングと、全ての情報へのアクセス権限を恐らく得ているのだと思うが、その後シルバに尋ねても、情報はワンタイムに抹消されており、彼がどんな手段で情報を得たのかは、永遠に外部に漏れないようになっている。
やがて彼の周りのシールドが、雨が払われるように降りていくと、シルバは私を振り返り、一つだけ出されていた仮想ウィンドウをこちらに向けた。そこには、点滅するポインターが、過去都市ケルンの脇200km地点を指していた。
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎