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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第63話 それぞれの秘密兵器






私の目の前でダグラス・ロペス中将は動かなくなり、彼はエリックの手で実験室へと乱雑に運ばれて行った。オールドマンを罵ったところでロペス中将は帰ってこない。私は失意の中だった。

しかしやはり、こちらを悪事に加担させようとして、オールドマンは汚い手を使ったのだ。

「オールドマン、こんな事で私を思い通りにさせようとお思いなのでしょう」

彼は短く笑って、「ならないのかね?ターカス」と言った。私は決然とこう答える。

「それを望まないから、中将は命を絶ったのです。私は、貴方に降伏などしません」

「でも、儂が命令の句を使えば、逃れられまい。君には元のようにロックが施され、識別番号は儂が書き換えた」

私は項垂れ、自分の限界に打ちひしがれていた…。




俺がもう一度目を覚ました時、幸いにも俺は何にも囚われていなかった。まあそりゃあそうだ。死体をガッチガチに縛り上げるような手間は普通掛けない。だから俺は、奥歯に仕込んであった薬液の入った義歯を吐き捨て、手に仕込んだナイフをまた取り出した。

偽の拳を握って開くと、拳を切り裂き、俺の右手はナイフになる。こんな物で敵さんに対峙出来る訳もないし、武器はすべて取り上げられたらしいが、ないよりはマシだ。それに、ナイフには簡単な磁力装置があり、簡易な磁力錠位なら開けられる。急場凌ぎにはなる。

俺はその部屋の灯りを点けず、なんとか廊下に出て、自分がまだ生きている事をターカスにだけ知らせなきゃいけなかった。

残念な事に、今はターカスの通信コードも変えられているらしく、個人通信を試みるも無駄だった。

「何か…」

俺の居た物々しい実験器具だらけの部屋にはロックが掛かっていなかったので、廊下にはすぐに出られた。しかしそこはどこだか分からず、部屋もいくつあるか分からない。それに、人感センサーに引っかかればアウトだ。いいや、もう掛かっているだろう。

もしや俺がエリックとやらに殺される前にターカスに出会えれば。その可能性に賭け、俺は慎重に、重要そうな部屋を探して廊下を歩いた。