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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第62話 中将の決断






私は、ヘラ嬢からまた、「頑張ってらっしゃい。きっと帰って来るのよ」と言われ、頭を撫でられた。今もまだその感触をセンサーでもう一度蘇らせられているような気分だ。でも、不可解だった。

私はメイドロボットだ。私にはあの少女の気持ちは解らない。ただ、何か気になる事があるのだ。それを考えようとすると、いつも私の脳内にはエラー音が響き、その後私は自分を取り戻す。彼女と居ると、何か大事な機能を失くしてしまうような気がする。きっと私が知りたがっている事は、私にとって危険なのだろう。




「逃げたオールドマンですが、シベリアにも、アメリカにも居ないようです。そちらはロペス中将から報告を受けました。つい先程です。居室の捜索をしても何の妨害もされず、人の居住空間に必要な物と、豪奢な調度品、白い壁以外は何も無かったとの事です。外からの監視も可能でステルス化は施されておず、よって、オールドマンが今後シベリアやアメリカに行く事は考えづらいです」

シルバはそこまでを淡々と喋りながら、ワールドマップの中からある検索を続けているらしかった。私は彼にそれを尋ねる。

「今君は何を」

「無駄だとは思いますが、この間スキャンした“エリック”の識別番号をワールドマップで探しています。衛星が12機ありますが、どれも反応しません。やはりエリックはまた識別番号を書き換えられたか、ステルス化の施された新たなオールドマンの居室に居るのかもしれません」

「どちらの方が可能性が高いんだ、シルバ」

ロペス中将がそう言うと、シルバは検索を諦め、1秒程停止した。そしてくるりと中将を振り返る。

「居ました。恐らくエリックです。ターカスも」

その場が湧き、私が叫ぶ。アルバとメルバも立ち上がった。

「どこに居たんだ!」

「ここです」

ターカスが叫んだのを最後に、辺りには煙幕があっという間に広がり、部屋は暗転した…