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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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「おかえりなさい、ターカス」

その庭にはいつもの通りに、四季折々の薔薇が咲き誇り、今は3月だったので、秋に咲く美しいクリムゾングローリーが主だった。

地軸のズレにより大きく変化したメキシコの季節。オールドマンにより失われた平和。それなのに、この少女だけは私を見つめている。彼女の信じている物は一体なんなのだろう?私は、それを彼女に聞きたいのだと解った。

しかし、その時私のデータにロックが作動し、エラー音が小さく鳴る。すると私は、自分がやるべき事を思い出した。

「お嬢様、ただ今帰りました。ですが、滞在は半日となります。帰宅がいつになるかは分かりませんが、今日はわたくしと過ごしましょう」

「ええ、ターカス。そうよ、もうお食事の時間だわ」

彼女は少し俯きがちに私の手を取り、私たちは食事室へ向かった。




私は彼女の斜め左後ろに直立不動の姿勢で立っていたが、彼女が呼べば働いた。

「ターカス、ごめんなさいね」

彼女がフォークを落としそう言ったらそれを交換し、歩行器をもう少し進めてもらいたがったらそうした。

食事の最後の方に、彼女の前にマリセルが出したのは、「エスカベッチェ」だった。前菜として出される傾向が強かったエスカベッチェは、今は魚が手に入る度に大量生産され、各家庭に保存食料として冷凍輸送されてくる。

ゼリーの中に入った魚の身に、私は思わず手を伸ばし、ヘラ嬢を止めかけた。彼女は魚が苦手だったはずだ。

「お嬢様…」

私がそう声を掛けると、ヘラ嬢は振り向き、お笑いになる。

「大丈夫よ、ターカス。わたくしもこれから、社交界に出入りしなければいけませんもの」

まるでもう世の中を知った後かのような彼女の口調は、なぜか私にショックを与え、私はそれがなんなのか理解出来ず、そのまま黙っていた…。