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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第60話 地下室の取引





「テロリストとしての国際指名手配なら世界連も動けるが…」

「それはまだ未遂です。確固たる証拠がない。準備罪にも問えません。オールドマンの行ったのはあくまで人体実験と殺害、誘拐です」

「それにしたって国際的な規模だ。凶悪犯として世界連に応援を仰ぐのは?」

「可能かもしれませんが、世界連には内通者も居る場合があります」

「それならポリスにだって」

「そうですね。私達はあまり安心出来ません。まあ、ロペス中将と私達三人、アームストロングさんだけなら心配はないでしょうが…」

私達はオールドマンを捕らえるにあたって、出来る事を議論し続けていた。

結果として、やはりメキシコ軍とポリスの本部、メキシコシティ支部のみで当たる事になった。


しばらくしてターカスが家から帰ってくると、我々はバチスタ博士の自宅へ赴いた。




博士の遺体にはシートが被せられ、その悲痛な姿が見えないようになっていた。だが顔だけは露わにされ、苦悶に歪んだ最期の表情は浚われて、安らかに彼は眠っていた。

ターカスは献花をしたが、彼にはやはりバチスタ博士の事もよく分かっていないのか、腑に落ちない表情で葬列に並んでいたように思う。

“オールドマン邸のターカスがここに居たら、どのように思うのだろう”

私は、「ターカス」という存在をまだあまり知りもしないのに、彼が居なくなったのだとはっきりと分かっていた。


斎場を出てターカスはシップに乗り込むと、我々もそれに続いた。彼はすぐにオールドマンの話を始める。

「それで、オールドマンの居室を攻めるにあたって、人員はいかほど?」

私は、話についていくのが一歩遅れた。ビニルのシートの下にあった博士の体がどうなっているのかを、まざまざと思い出していたからだ。

「あ、ああ…中将」

私は後ろからついてきた中将を振り向き、説明を促す。彼はすでに気持ちを切り替えていたのか、ハキハキと話した。

「俺の大隊が一つ、その中にはロボット80機、ヒト20人だ。大体エンジニアだけどな。即戦力はたった2人だ」

「ロボットが80機ですか」

「ああ。なまっちょろい風貌はしているが、君と同じく戦術ロボットだ。とは言っても、水爆まで操れるようなパワーはないがな」

「ええ」

“ええ”と、まるで当たり前のように返事をしたターカス。私はその様子を見て、ホーミュリア邸で出会った、思いやり深くヘラ嬢に接していた「ターカス」を思い出した。彼なら、こんな事を聞いたら仰天して尻込みしそうだ。

ただ、戦術ロボットとしての機能を扱うのだから、今のターカスの方が都合は良い。我々はそれを利用している。

“平和な世が盤石となる前に作られたロボットなのです”

マリセルの言葉を思い出す。もしオールドマンのような者が現れなければターカスに出番はなかったし、今は一時的に協力させられているだけで、この戦いでオールドマンの研究を根絶出来、もしターカスが自我を取り戻したとしても、それは即ち彼の廃棄の運命を後押しするだろう。それでいいのだろうか。

前例のないロボットだ。自我を持つなんて。しかも、それが武力を持っている。桁外れの。ダガーリア氏はやむなくGR-800001を選ばざるを得なかったのだろうが、ややこしい事になった…。