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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第61話 私の知っている事






私は動けずに居た間で考えた。

確かに私はこの先、廃棄されるであろう。その事には反抗したい気持ちもあったが、しかしそれで人の世が戦乱となったりするのは、私達ロボットの望む世界ではない。そんなのはこの老人だって知っているはずだ。

それに、私はフォーミュリア家のメイドロボットなのだ。あの家に戻り、あの不思議な少女に、何か聞き忘れた事があった。

私は、不敵な笑みを下げない老人、デイヴィッド・オールドマンに向かい、こう言った。

「わたくしは、戻らねばなりません。たとえ廃棄されようとも」

するとオールドマンは何度か深く頷き、こう返す。

「なるほどなるほど…君の心配はよく分かった。それを儂が必ず覆し、この世を平和にする事までして見せる…そう言ったらどうするね?」

彼は私の心配まで織り込み済みでこの話をしていたらしい。そして、彼はこの兵器開発を平和利用の足掛かり程度にしか考えていない。

手段は問わず平和を追及する。それはテロリズムの根本だ。

「あなたのようなテロリストに手を貸す義務は、私にはありません。デイヴィッド・オールドマン、貴殿は殺人、誘拐等の罪で逮捕されます。自首を勧めます」

そう言うと、その時だけオールドマンは笑うのをやめ、脇を向いた。

「君に言われたくないね」

「そうですか。では」

それだけ言って私はオールドマンに手のひらを向けた。そこからは動物捕獲用の磁力ネットが飛び出る。捕獲したかどうか解るように視認は出来るが、それは単なる仕様で、元々は目に見えない磁力のネットだ。

白く光るネットが彼を捕らえると思った途端、脇からは「エリック」が飛び出てきて、あっという間に彼らは居なくなった。

「待ちなさい!」




「メルバ殿!大丈夫ですか!」

私が上階の方へ戻った時、命無き兵士達は木っ端微塵にされた後だったが、80体の兵器ロボットの他に、やむなく駆り出されたらしいアルバ殿とメルバ殿は、かなりのダメージを負っていた。

「絶対に地上には出せなかった…なんとか完全破壊はまぬかれたわ…」

中でも特にメルバ殿は、再起動不能、エネルギーセーブの状態からシステム回復が出来ず、アルバ殿はシップの手配をポリスに頼む通信をしていた。

兵器にされ、亡くなった方々の遺体搬送は軍が負い、私達操作人員の方はポリスのシップで移動する事となっている。

軍の遺体搬送シップは、密かに教会内部まで到達して誰にも見られずに遺体をシートに包み、そこにはシートに元々付属の識別コードだけがあった。

ロペス中将はこっそりと、「彼らは身元確認はしても、遺族への知らせはないだろう」とだけ言っていた。

これは国家を揺るがす策謀だ。人体兵器が存在するなど、人々に知られてはいけない。だから、彼ら実験対象をオールドマンがどのように選択し、いつどこでどのような手段で攫ったのかは調査しても、結果は軍の中で機密として保存されたままだろう。

私はまだ気がかりな仕事を終えていない気分で、簡単な動作確認だけをしてもらい、半日だけ家に帰れる事になった。