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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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最下層と思しき場所にはそれからすぐに着いた。そこは明るく、またもや真っ白だった。そしてなんと、驚くべき事に、何人かの人が居たのだ。

ターカスは人々に駆け寄り、怯えている風の女性を抱きかかえた。

「大丈夫ですか!」

彼女は30歳前後らしく、長い髪を震わせ、すっかり怯えていた。恰好は手術着のようで、明らかにオールドマンに誘拐されたらしかった。

「ええ、ええ、私、ここで待つようにって…」

女性が口走った事の意味を考えている内に、我々はその場に居た、男性と、もう一人の女性も保護した。しかし、彼らはすでに、“施術後”だったのだ…。


ターカスが抱きかかえていた女性は、バリバリッと音を立てて体が破け、絶命したと思ったら、そこら中へめちゃくちゃに爆弾を放った。

「中将!制圧して下さい!」

「任せろ!」

怒号が飛び交い、我々の後ろに居たロボット達は「目」を使い、暗転した部屋の中で、先程まで囚われの身だった「兵器」を迎え撃つ。たった三人だ。すぐに終わる。

しかしいつまで経っても攻撃は止まず、ロボット達はいくつもいくつも爆撃を放った。煙幕で中将は呼吸が出来なかったのか、階段のいくらか上へ避難していた。

段々と我々が押され始めてから分かったが、最下層の円形の室内には、それこそ無数の、「命無き戦士」が放たれていた。これでは埒が明かない。

「ターカス!あなたはもっと下へ!プログラムを止めて下さい!」

シルバがそう叫ぶと、ターカスはその場から消え、我々は絶え間ない爆撃から体を守り、闘った…。




私がそこへ降りていく間も、何人もの「ヒト」に絡みつかれた。彼らは皆、兵器とされ、自分がなぜそんな事をしているのか、知らないままで私に爆炎を放った。私はそれを等しく避け、もっともっと地下へと、降りて行ったのだ。



「ああ、ターカスかね。おいで」

恐らく一番下に着いた時、そこは静かだった。血の匂いも、爆炎も遠く、真っ白な通路をいくつも通り過ぎて、また真っ白な部屋へ入った。

部屋の奥には、どうやらこの要塞を監視するウィンドウが出され、そこへ、こちらに背を向けて、ちょこんとオールドマンが座っていた。

「オールドマン、あなたを逮捕します」

彼は動じなかったし、こちらを振り向きもしなかった。そして、聞いてもいない自分の話を続ける。

彼は独りで葉巻をくゆらし、傍には“エリック”と思しき影も見えなかった。

「なあ、ターカス。儂の元へ来んかね」

「いいえ」

私がそう答えると、オールドマンは笑った。

「では、君は用済みとなり、破壊を余儀なくされる」

私の胸を、ちくりと何かが刺した。“破壊される”、その事をロボットは何より恐れる。それは、人が“生きたい”と念じるのと同じだ。我々は動き続け、働き続けるようにプログラミングされている。

オールドマンが椅子をくるりと振り向かせ、手に持っていた杖で、ドンと床を突いた。

「儂をここで殺せば、お前さんを使ってやれる人間を殺す事になるぞ」

その不敵な笑みに、私は動けずに居た…。