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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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「それにしても、人間の中にロボットを埋め込み、遠隔操作による爆撃などを行うのか。厄介だな」

私達は死んだ人達の墓を取り急ぎ形だけ作り、凍らせた体は新しいシップを呼び寄せて厳重に運ぼうという話をした。オールドマンの屋敷からはもう引き上げなくてはいけなかった。ロペス中将がかなりの怪我をしていたからだ。

メキシコへの帰りのシップで私達は話している。私達の傍らには凍った博士の体が保存袋に入れられていた。

「ああ。どう考えても、街中で混乱を起こすためだ。オールドマンはその手段を持って逃げたんだろう。奴が逃げそうな先へ、追わなきゃならない」

メルバ殿は、深刻な様子でそう話す。

「しかし、オールドマンの知り合いらしい博士すら、こんな事にするとはな。冷酷な奴だ」

私はそこで何かを言いたかったが、博士の入れられた樹脂製の袋を振り返る事も出来なかった。




私達が帰ってから、私はホーミュリア家にはまだ戻らず、検疫を受け、更にロボットとしての検査をし、あとは捜査の行く末の話に加わった。どうやら私“ターカス”は、捜査員ではなくとも、重要参考人として扱うとアームストロング氏から話があった。


「シルバ殿」

「お久しぶりです、ターカス」

私達はまた一同に会し、銭形殿を悼んでから話を始めた。

「遠隔操作の生物兵器。しかも人間、ですか」

シルバ殿は、凄まじいスピードで私達の話を整理し、データ化しようとしているようだ。彼はいくつものウィンドウにそれを違う形で書き留めている。日付、場所、時間、人数、エネルギー性質、攻撃形態、実際の映像等々。

「もしそれが街中に解き放たれれば、大変な事になる」

アームストロング氏はそう言う。腕を三角巾で吊って、頭に包帯を巻いたロペス中将も、「うむ」と頷いた。私も自分の見た事は話した。

シルバ殿の返事を待っていると、彼は一つだけウィンドウを新しく立ち上げ、それをこちらに向けないままでこう話した。

「次にオールドマンが行く場所ですね。彼の隠れ家については実はいくつか調べがついています。皆さんが出発してから、僕は次の手を打つため政府の援助を受けられるように取り計らいオールドマンの身辺を洗いました。出てきたのは3箇所です」

「3箇所…」

私はその多さに少し不安に思って、声に出してしまった。シルバ殿は頷く。

「それはどこなんだ、シルバ」

アームストロング氏がそう言うと、シルバ殿がこう答える。

「1箇所はシベリア、もう1箇所はニューヨーク。もう1箇所は…メキシコシティです。皆さんはオールドマンがこの内のどこに行きたがると思いますか?」

私達はそれを聴いた時、全員が同じ事を考えただろう。その場に緊張した沈黙が立ち込めていた。



<第59話 少女とロボット>



「ねえマリセル。ターカスはまだ戻らないの?」

わたくしはそう聞かれて、思わずドキッとしてしまった。ターカスをメンテナンスに送ったと言ってから、もう半日も経っていた。私の動揺を悟ったのか、お嬢様も表情を曇らせる。

お嬢様は何も言わずにウサギのコーネリアを床に放すと、わたくしに向き直ってこちらを睨みつけた。

「…何か隠し事があるのは、わかっていたわ」

そう言われたことに、意外だとは思わなかった。ヘラお嬢様はターカスの変異を感じていたし、私とターカスがバチスタ博士の元へ向かう時、どこか不安そうではいたものの、全て了解済みと言わんばかりの顔をしていらっしゃったからだ。

「話してちょうだい、マリセル。そうでなければ、あなたをこれまでと同じに信頼するわけにはいかないわ」

私は仕方なく、事の次第を話す事にした…




「そう…お父様が…」

ヘラお嬢様は、大して驚かなかった。今までに実際に起きた事の方が、驚きに値するだろう。


ターカスは、お嬢様の弟君「ターカス」の名を付け、脳細胞まで移植されていた事。今はその細胞を失っている事。彼はそれらのため廃棄されるべきロボットである事…。それらを知っても、お嬢様はそこまで動じなかった。


「わたくし達には、そんな事情があったのね…今まで、ずっと…」

わたくしはなかなか何も言えず、お嬢様のこぼす独り言を聴いていた。でも、ふとお嬢様が顔を上げ、私に優しく微笑みかける。

「ねえ、マリセル。もしこれを知っていたのがあなただけだったとしたら…あなたは、どうする?」

そう言われた私は、俯く事しかできなかった…。