メイドロボットターカス
「それにしても、人間の中にロボットを埋め込み、遠隔操作による爆撃などを行うのか。厄介だな」
私達は、死んだ人達の墓を取り急ぎ形だけ作り、凍らせた体は、新しいシップを呼び寄せて、厳重に運ぼうという話をした。オールドマンの屋敷からはもう引き上げなくてはいけなかった。ロペス中将がかなりの怪我をしていたからだ。
メキシコへの帰りのシップで、私達は話している。私達の傍らには、凍った博士の体が、保存袋に入れられていた。
「ああ。どう考えても、街中で混乱を起こすためだ。オールドマンは、その手段を持って逃げたんだろう。奴が逃げそうな先へ、追わなきゃならない」
メルバ殿は、深刻な様子でそう話す。
「しかし、オールドマンの知り合いらしい博士すら、こんな事にするとはな。冷酷な奴だ」
私はそこで何かを言いたかったが、博士の入れられた樹脂製の袋を振り返る事も出来なかった。
私達が帰ってから、私はホーミュリア家にはまだ戻らず、検疫を受け、更にロボットとしての検査をし、あとは、捜査の行く末の話に加わった。どうやら私“ターカス”は、捜査員ではなくとも、重要参考人として扱うと、アームストロング氏から話があった。
「シルバ殿」
「お久しぶりです、ターカス」
私達はまた一同に会し、銭形殿を悼んでから、話を始めた。
「遠隔操作の生物兵器。しかも人間、ですか」
シルバ殿は、凄まじいスピードで私達の話を整理し、データ化しようとしているようだ。彼はいくつものウィンドウにそれを違う形で書き留めている。日付、場所、時間、人数、エネルギー性質、攻撃形態等々。
「もしそれが街中に解き放たれれば、大変な事になる」
アームストロング氏はそう言う。腕を三角巾で吊って、頭に包帯を巻いたロペス中将も、「うむ」と頷いた。私も自分の見た事は話した。
シルバ殿の返事を待っていると、彼は一つだけウィンドウを新しく立ち上げ、それをこちらに向けないままで、こう話した。
「次にオールドマンが行く場所ですね。彼の隠れ家については、実はいくつか調べがついています。皆さんが出発してから、僕は次の手を打つため、政府の援助を受けられるように取り計らい、オールドマンの身辺を洗いました。出てきたのは、3箇所です」
「3箇所…」
私はその多さに、少し不安に思って、そう声に出してしまった。シルバ殿は頷く。
「それはどこなんだ、シルバ」
アームストロング氏がそう言うと、シルバ殿がこう答える。
「1箇所はシベリア、もう1箇所はニューヨーク。もう1箇所は…メキシコシティです。皆さんは、オールドマンがこの内のどこに行きたがると思いますか?」
私達は、それを聴いた時、全員が同じ事を考えただろう。その場に、緊張した沈黙が立ち込めていた。
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎