メイドロボットターカス
ドゴォーン!
その音は、恐らく眼帯の頭だけを狙ったのだろう。俺達は祈った。
博士がなんとか一命を取り止め、エリックだけが壊滅的な被害を負っている事を。でも、無駄だった。
光学銃の光が止んだ時、博士とエリックの居た場所には、誰も居なかった。
「何!?どこへ行った!おい!眼帯!」
俺は周囲を見渡しそう叫んで、必死に博士の姿を探した。一般人を殺しちゃ何にもならない。
中将は銃を下ろして周りを見渡したが、屋敷の上の方を見て、指をさした。
「あそこだ!」
俺が振り返ると、門を飛び越えていく眼帯の背中と、脇に抱えられてぐったりしている博士の後ろ姿が見え、すぐに消えた。
「ジャックを起こせ!それから、ターカスの機能を戻すんだ!博士を救出する!」
アルバは、電源ボタンを外されていない、ホーミュリア家のターカスに駆け寄った。そして、彼の体の電源ボタンを何度か押した。
「ターカス!起きて!ターカス!」
しばらく電源ボタンの長押しを続けていると、僅かながらターカスの目のランプが光り始めた。
俺達は一安心して、ターカスに話しかける。中将も俺も、ターカスを囲んでいた。
ターカスは正気付いて、慌てて起き上がる。
「皆さん!戦いは…!」
俺は、ターカスの腕を引いて起き上がらせた。
「大変だ。バチスタ博士がさらわれた。一刻を争う。中へ攻め入ろう。サポートは変わらず俺達がする」
「ええっ!?」
ターカスは一瞬言葉を失っていたが、すぐによろよろと立ち上がり、屋敷目指して駆けて行った。俺達もそれを追いかける。
エリックの台詞が頭の中を反射していた。
“兵器開発をして、各国の穀物を狙ってる。これはアメリカの長年の夢だ”
「へっ!思い通りになると思ったら、大間違いだぜ!」
俺とアルバは急いで門を潜り、ロペス中将は、ジャックを担いで俺達を追いかけて来た。
“一刻の猶予もない!”
作品名:メイドロボットターカス 作家名:桐生甘太郎