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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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メイドロボットターカス

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第55話 戦闘終了






私達は、ターカスに事情をもう少し詳しく説明した。

偽ターカスには、本来彼が持っているはずだった脳細胞がすでに移植されているだろう事。

偽ターカスの意思はデイヴィッド・オールドマンに半分は支配されていて、彼は残虐な攻撃も辞さないだろう事。

それらを飲み込んだ上で、“ターカス”は我々に協力すると約束してくれた。


「じゃあ行こう。申し訳ないが、先陣を切って攻撃に掛かるのは君になる。君以上に強いロボットはここに居ない」

“ターカス”はもうあまり不安そうな顔をしていなかった。やはり戦術ロボットだからだろう。

「承知しました。中に入ってすぐに戦闘となるかは分かりませんが、なるべく早く済ませましょう。その方が皆様への被害は少ないでしょう」

私は、戦術ロボットの誇りと自信を見せつけられ、少々安心した。




私達がシップの停まっていた麦畑からオールドマン邸へ移動する間に、“ターカス”がピタリと立ち止まる。彼は前を向いたまま、こう言った。

「来ています」

私は警戒を強め、こう返した。

「GR-80001か」

「ええ」

その時ターカスは、後ろを振り向いた。我々はそれを追いかける暇もなく、ターカスが手のひらから小さな爆撃を打ったのは、我々がやっと“ソレ”を認めた瞬間だった。

ドオン!ドオン!ドオン!

爆発音は3つ。その間に私達の後ろには、いつの間にか偽ターカスが迫っていた。

火炎は麦畑を燃やし、ターカスは空へと飛び立つ。

「戦場を空へと移すのね。追いましょう、メルバ!」

「ああ!」

子供達も空へ飛び立ち、アルバとメルバの靴からはロケット噴射の炎が伸びた。


しかし、アルバとメルバがサポートをするのは、困難だった。

“ターカス”と“偽ターカス”の動きはとても早く、もちろんあのアルバも遅れを取ったのだから、追いつける訳がない。

子供達は右往左往していた。そこへ、ロペス中将が大声を出す。

「ターカス!偽ターカスを抱えてこちらへ向けろ!お前をホーミングで爆撃する!」

私は中将を振り返り、慌てて止めようとした。

「中将!それではターカスが巻き添えに!それに、ホーミングではターカスが背後から撃ち落されてしまうかもしれません!」

中将は「ククッ」と笑って、背中に背負っていた光学銃を肩に乗せる。

「大丈夫だ。コイツは少々馬鹿なガンでな。ホーミングと言っても、大まかな位置にしか射出されない。だったら、抱えちまえば外れる訳がないさ」

上空からは返事はなかったが、その内に「ガン」とか「バキン」という音が止むと、ターカス達が姿を現した。

「ロペス中将!今です!」

ターカスは、傷だらけの偽ターカスを抱えていて、こちらに彼を向けている。

「ロペスさん!私達も加勢するわ!」

「エネルギー充填完了!撃つぞ!」

子供達も自分の手を開き、火器を偽ターカスに向ける。中将が背負った光学銃からは、キイイ…という音がしていた。

バゴォーン!

その音は私の耳の機能を壊しそうな程大きく、私は思わず、「やった!」と胸を沸き立たせた。子供達の放った爆撃音もした。

しかし、私が上空を見上げようとした時、傍に居たバチスタ博士はこう言った。

「そんなもので、あの子の装甲を破れるはずがないのじゃ…」

私はその言葉に、上空を確認しようと目を凝らした。

すると、ターカスの手に抱かれた偽ターカスは、傷は出来ていたが全く平気そうな様子で、ターカスから逃れようと、ジタバタしていた。

ロペス中将は茫然とした様子で空を見上げていて、私は博士を振り返る。

「何か、何か手はないのですか!」

博士は頷き、「ある」と言った。

「では、早くそれを行わない事には、この戦いが長引けば…!」

「あまりこの手は使いたくなかったんじゃが…」

そう言って渋っている博士を私は急かした。

「危険な手なのですか?ですが、もうそんな事は言っていられません!このままでは、ホーミュリア邸のターカスも破壊されてしまいます!」

「わかった。では諸君、私から離れたまえ」

そう言うと、博士はポケットに手を突っ込み、何か球体の、鉄で出来た物体を取り出した。

「博士、そいつはなんです」

中将が博士に聞くと、博士はこう言った。

「これも、核融合炉じゃ。でも、危険性はターカス達に取り付けてある物より、数段跳ね上がる。制御不能になる事がないとも言えんのじゃ」

「それは…」

私は、放射能への耐性はある。しかし、バチスタ博士とロペス中将は生身の人間だ。

「博士、それを使用して大丈夫なのですか?」

博士は小さく溜息を吐いてから、なんと、こちらを見て、にかっと笑った。

「アームストロング君、こういう時は笑ってみる事じゃ。なあに大丈夫。核融合炉の暴走なんて、可能性の低いものなのじゃから」

「どうやって稼働するのです?核融合炉を使用する事で、闘いを止められるのですか?」

「分からん奴じゃな。これはターカス達が使っている物より大出力じゃ。更に、これをフル出力で動かす。そうすれば辺り一帯の水素は吸い取られ、彼らは使い物にならなくなる。そういう寸法じゃよ」

「なるほど、それなら確実ですね」

「ただし、この核融合炉は小型のため、超電導素材も付いていない。いわば簡易の物なんじゃ。蓄電が出来ない以上、エネルギーは放出しなければいけない。それは空へ放つ事にする。じゃから、これを上に投げ上げたら、お前さんら、体を低くしろ」

私はそれを聞いて、また博士を止めようとした。

「博士!それではアルバとメルバが危険に晒されます!」

「今現在、このアメリカは、水素爆弾を扱えるロボット2人の戦闘という脅威に晒されている。君が2人を呼び戻せばいいだけの話じゃ」