小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

元禄浪漫紀行(21)〜(28)

INDEX|14ページ/24ページ|

次のページ前のページ
 




目が覚めた時、俺は布団の上に横になり、薄い上掛けまで掛けてもらっていた。

“死んだにしちゃおかしいな”

そう思って起き上がろうとすると、誰かが俺の肩を布団に押し付けて止めた。

「目が覚めたんだね。でもまだ動いちゃならないよ。もう少しでお医者が来るから」

その声で俺はびっくりして、半開きほどに寝ぼけていた目を見開き、目の前に居た“彼女”の顔を、かすむ目でなんとか見ようとした。

声ですぐにわかったけど、それはやっぱりおかねさんだった。


“嘘だろ。こんなことってあるのか…?”


俺はすぐに両目に涙があふれ、嬉しさで一気に有頂天になりそうだった。

「おかねさん…?なぜ…」

そう聞くと、おかねさんは悲しそうに横を向き、浴衣の袖で目を押さえて、しばらく何も言わなかった。でも彼女はしばらくして気持ちの昂ぶりがおさまったらしく、涙の染みた袖口を隠して、俺に笑う。

「おかねさん、私を探して下さったんですか?それに、お医者様を呼んだなんて、それは申し訳が…」

俺がもう一度起き上がろうとすると、おかねさんは今度もやんわりと俺を引き止め、床の上に戻してくれた。

「起き上がっちゃならないっていうのに。お前さん、病の中なんだから、じっと寝てなくちゃならないよ。ああ、本当に見つかってよかった…」

それで俺は、“おかねさんは俺を追い出しはしたものの、やっぱり心配になって、探してくれていたんだ”と知って、また泣きそうになった。

“これは夢じゃないんだろうか。俺に都合がいい白日夢じゃないんだろうか?”

「お前さんを追い出したなんて、今になってみればあたしはどうかしていたんだよ。許しとくれ、堪忍しておくれ…お医者が来るまでの辛抱だよ。まあお前さん、あたしのせいでこんなになっちまって…!」

おかねさんは袂でまた涙を拭い、「手拭いを替えるからね、ちょっと我慢しておくれな」と言って、俺の額の上ですでにぬるくなっていた水布巾を取り換え、「何か欲しいものはあるかい?」と優しく聞いてくれた。

俺は勇気を出してどうにか心を打ち破り、こう言った。

「なんにもいりません。私はここに戻ることができるなら、他にいるものなんかないんです」

「もちろん、帰っておいでな。あたしはあの時正気じゃなかったんだよ。お前さんを追い出すなんてさ…ごめんよ、許しておくれね」

おかねさんは泣きながら笑って、そう言ってくれた。






それから夕刻になって一人、お爺さんのお医者さんが来たけど、お医者さんは、「流行り病だから、本人の体に任せることしかできないだろう。よく食べさせてやりなさい」と言うだけで帰って行ってしまった。


俺は全部で四人の医者に診てもらったけど、結局どれも同じ、「流行り病は本人が耐えて過ぎるのを待つしかない」と、皆同じ答えを返すばかりだった。



医者がみんな帰って行ってから、おかねさんは悔しそうに泣いて、俺の額をさすった。

「医者なんてみんな不人情なもんだねえ。「流行り病だから仕方ない」なんて言ってさ…。安心しなよ、よくなるまでは、あたしが面倒をすっかり見るから…」

「ありがとうございます、すみません」

「いいんだよ謝らなくて。それをするのはあたしの方さね…」





それから数日して俺は熱が下がり、でも右目の上に大きな痘痕(あばた)が残ったようだった。それがどんな病気かは知らなかったけど、どこかで聞いた症状だなとは思っていた。

でも、俺がなっただけなら、よかった。おかねさんにうつしたりしたら大変だ。



それなのに、俺はある朝、何か大きな物音で目が覚めた。しばらくそれと気づかなかったけど、だんだんと意識がはっきりしてくると、それは誰かが咳をしている声だったとわかった。

ゴホッ、ゲホッ、ゲホッ!

俺がびっくりして隣を見ると、横になっているおかねさんの顔も首も赤い発疹で覆われ、彼女は激しい咳で息も継げずにいた。


「おかねさん!」