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メデゥーサの血

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 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。ご了承願います。たまに少し淫虐な表現が出てくるかも知れませんが、イメージ上の表現として見ていただければ幸いです。

                稀代の殺人軍団

 時代は昭和二十年代というから、まだまだ戦後の混乱が残る時代である。今の時代の人間からは想像することもできないほどの混乱が生じていた。
 街には家のない人たちが溢れ、露天では闇市が行われていた。薄汚れた服を着た少年少女が駅前などに列を作って座り、靴磨きにせいをだす。露店を通り過ぎる人の数は結構いて、その中を元締めと呼ばれる親分が練り歩いている。
 彼らは場所を貸すことでで、いわゆる「みかじめ料」というのも貰い、その見返りに用心棒のようなことを引き受けて、お互いにそれを了承することで生計を立てている。もちろん、反社会的勢力であるが、彼らがいることで、ある意味安心して商売ができるのだ。
 今では考えられないようなそんな時代、警察も決して市民の味方ではない。むしろ定期的に取り締まって、警察も罰金をいただくことでいわゆる体裁を保っていたと言ってもいいだろう。通路を歩く人の中には、軍服を着た復員兵も混じっていて、時代的にはまだ戦争の影を引きづっていたのだった。
 車に乗っている人などはほとんどおらず、それこそ車と言えば、ほとんどはジープに数人で乗り合わせている進駐軍の連中くらいである。当然のことながら進駐軍というのは外人部隊で、そんな青い目の連中に前述の靴磨きをしているボロボロの衣服を着た子供たちは群がり、口々に、
「ギブミーチョコレート」
 と叫びながら、彼らの配るチョコレートやチューインガムに群がるのだった。
 そんな少年たちを、進駐軍の連中はどんな目で見ていたのだろうか。顔は笑っているが、何を考えていたのかよく分からない。まるで動物園の檻の中にいる動物にエサでもやっている感覚だったのだろうか。相手を人間として見ていなかったのではないかと思うと、いくら生きていくためだったとはいえ、当時の日本人は可哀そうであり、情けないとも言えるのではないだろうか。
 そんな、時代に生き残るには、混乱に乗じて闇市を起こすか、やみ物資のブローカーにでもなって、進駐軍と取引し、お金をためていくか、あるいは大きな窃盗などの犯罪を行うか、それくらいしかなかったのではないか。いくら元々お金があったとしても、そのお金がある日突然、紙屑になってしまう時がやってくるのだから……。
 いわゆる
「新円切替」
 と呼ばれるものである。
 同時の情勢として、
「物資不足に伴う物価高及び戦時中の金融統制の歯止めが外れたことから現金確保の為の預金引き出し集中の発生、また一方で政府も軍発注物資の代金精算を強行して実施したことなどから、市中の金融流通量が膨れ上がり、ハイパーインフレーションが発生した対策」
 というものが背景にあり、ある日突然に今まで使っていたお金が紙屑同然になってしまったのだ。
 そんな状況でもあり、かつての財閥制度も廃止になった。それは、戦争責任として、当時の政府、軍部と、そして力のあった財閥が戦争景気を望んだということで、日本の軍国主義解体のやり玉に挙げられたこともあり、それまでの権力や経済力による上下関係は完全に崩壊した、そもそも天皇を元首とした国ではなくなったこともあって、天皇の主権を国民に移すということが一番の軍国主義を廃止させる一番の目的だったはず。
 そんな時代だったのだが、途中、変革を余儀なくされ、戦後の日本の分岐点となった事件が勃発した。
 元々日本という国はその立地条件の元から、
「アジアにおける反共の防波堤」
 として、朝鮮半島と日本列島が注目されていた。
 朝鮮半島に対しては、北から陸続きで、ソ連が侵攻してきたので、南部をアメリカが占領することになり、その後協議を行い、南北分割占領ということになった。その問題から南北の混乱に乗じて、南北でそれぞれ建国宣言を行うという事態に発展した。事態はそこで終わらず、翌年に勃発した「朝鮮戦争」は、初めての民主主義対共産主義の大規模な戦争として問題となり、結果現在もまだ和平が行われていないという悲劇を呼んだとされる。日本はその時、米軍にとっての、
「最前線への基地」
 としての役割を果たし、しかも軍需物資を作る工場も発展することで、特需が生まれた。
 敗戦国として、軍国主義を廃止すると言っていた建前とは別の減少が起こってしまったといえる。
 そういう意味では日本にとって、幸運だったのかも知れない。
 軍国主義への復活とはいかなかったが、戦後十年くらいでかなりの復興が進んだのは奇跡に近いのではないだろうか。
 何しろ終戦時点で、日本本土の主要大都市は、空襲によってほとんどが壊滅、焦土と化していたにも関わらずである。
 戦前の日本を思い図っていれば、本当に奇跡である。
 もっとも、戦前の大正末期から戦争終結までというのは日本に限らず、世界的に悲惨な時代であったのは間違いない。
 まず民族主義、協定に結ばれた欧州列強は、民族問題から引き起こされた紛争から、協定により、
「自国が戦争に巻き込まれれば、協定を結んだ国は、同じように参戦する」
 という協約で結ばれていたことで、紛争の二国が、四国になり、六国になって、やがて世界大戦に突入したのは周知のとおりである。
 四年にも及ぶ欧州の大戦は欧州を混乱に巻き込んだまま終結したが、その時の日本は、世界大戦を、
「対岸の火事」
 として、戦争特需に沸いていた。
 しかし、特需というのはいきなり終わるもので、その反動が待ち受けているというのは歴史が証明していることだが、この時の大戦が終了し、前年の売り上げを見込み製造したものが、戦争終結後まったく売れなくなったことで、一気に今度は不況に見舞われることになる。
 そこに追い打ちをかけたのが、大正末期に起こった関東大震災であろう。
 これは都市型直下型の大地震として、横浜市、東京市を中心に文字通り関東全域で被害を出した。死者行方府営者が十万人を超えたという未曽有の大災害だった。戦争後の不況に大地震が追い打ちをかけ、さらにアメリカで発生した株大暴落を発端に、今度は昭和に入ってからの世界的な大恐慌にも巻き込まれ、日本のような小国、資源のない国は国の存亡に窮していたと言っていいだろう。
 朝鮮半島をすでに併合していた日本は、日露戦争に勝利したことにより獲得した満州の権益を確固たるものにしようとして目論んだのが、いわゆる「満州事変」と言われるものだった。
 満州を支配するということは、ソ連の脅威を取り除くという意味合いと、もう一つ大きな問題があった。
作品名:メデゥーサの血 作家名:森本晃次