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フリーソウルズ Gゼロ ~さまよう絆~

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#4.カストロ帽




佐原彰宅現場周辺
塀の上にある防犯カメラ。
その屋敷のインターホンを押す捜査員A,鈴木。
屋敷からでてきた家政婦と応対する鈴木。
高級乗用車を停めて、職務質問する捜査員B,C。
現場の指紋採取をする鑑識B。
降り出した雨が歩道を濡らす。
傘をさして別の屋敷の家人に聞き込みをする捜査員Aと鈴木。
雨の中、郵便配達員を呼び止める捜査員B,C。
ショッピングモール内の佐原宝飾店の販売店舗従業員に話を聞く捜査員D、E。



摩耶大学
雨の中、傘をさしてキャンパスを歩く大学生たち。
大教室で講義をする天根。

天根  「・・・脳波には、アルファ波、ベータ波、シータ波、デルタ波とありますが、これらは、別々に出ているのではありません。波長の違いによって呼び名が違っているだけなのです。一般的な脳波の測定は頭蓋骨を介します。そのため、信号が五分の一から十分の一に減衰するのに対し、脳磁図測定では頭蓋骨による減衰はありません。まばたきや眼球運動などによるアーティファクトも誤差の範囲に抑えることができます。・・・データ解析の初歩的な知識として君たちには、球面調和関数をぜひ理解していただきたい。あまりに難解なために挫折する学生も多いと聞くが、これは量子力学を勉強する上で欠くことのできない・・・」

大教室の後ろで立ち見で講義に聞き入る平松学長。



セレモニーホール
彰と里可子の遺影が祭壇に祀られている。
喪主席には憔悴した昭吉が肩を落として座っている。
会社関係者、従業員が次々と弔問に訪れる。
ひとりの女子従業員が昭吉の傍らの和田に尋ねる。

女子従業員 「お孫さんの具合、いかがなんですか」
和田  「まだ、意識のほうが・・・」
女子従業員 「でも、命が助かってよかったですわ」
和田  「はい・・・」

溜息をつく昭吉。



摩耶署捜査本部
宝石商強盗殺人事件本部の立看板が立つ会議室。

捜査員D「全店舗従業員の証言を取りまとめました。それによると、従業員や客とのトラブルはなし。退職した従業員についても同じです。仕入先、同業者との折り合いもよく、特に恨みを買うような点は見当たりませんでした」
捜査員C「現場から採取した指紋はすべて佐原家の家族および害者の父、昭吉のものでした。犯人と思われる第三者の指紋は検出されませんでした」
捜査員A「現場周辺の聞き込みですが、各家とも口が重く成果なし。不審人物、不審車の情報も今のところタレコミなしです。現在範囲を広げて聞き込みを継続中」
鈴木  「防犯カメラの映像に映っている人物と車について裏どりしています。今のところ、不審者は出ていません」
奈須  「進展なしか‥‥。凶器もまだ見つからんのか、湊くん?」
湊   「近隣の川、草むら、林、側溝、全部当たらせています」

鑑識Aが飛び込んでくる。

鑑識A 「ありました、不審な車。コインパーキングです」

ざわつく会議室。
ホワイトボードに貼られた地図Pのひとつを○で囲む鑑識A。

鑑識A 「人が乗ったまま一時間半。事件の直前にパーキングを出ています」
奈須  「そうか、それでナンバーは?」
鑑識A 「ナンバープレートは、廃車になったものでした」
湊   「運転者の顔は認識できますか?」
鑑識A 「暗いので、顔はほとんど・・・」
奈須  「できる範囲でいい。最大限鮮明に」
鑑識A 「はい」

会議室の照明が落とされ、スクリーンに防犯カメラの映像が映しだされる。
コインパーキングから出てくる黒塗りの乗用車を運転する人物のぼやけた輪郭。
湊が友也に似たぼやけた顔を凝視する。



関西フラワー園芸社
園芸社の事務所
無人の所内でつけっぱなしのテレビのワイドショーを放送している。

コメンテーター 「警察の対応が遅かったのではないでしょうか・・・」
TVキャスター 「とにかく一刻も早い犯人の逮捕が待たれますね。それでは次の話題です」


園芸社の駐車場
メールを読む友也。

ツジヤマ “どんな様子だ。もう一週間経つ”

メールを返す友也。

ハンガー “意識は戻らない。医者がそう言っているのを聞いた。だから”
ツジヤマ “だから? もし突然目覚めて喋りだしたらどうする?”
ハンガー “俺は自分の仕事をした。ミスをしたのはそっちだ”
ツジヤマ “そんなこと言っていいのかな。ボクら三人は共犯だ。娘に供述されたら三人とも死刑だよ”

友也  「(独り言)俺はやってない!」

スマートフォンの電源を切る友也。

ふたりの社員が台車を押しながら友也の近くを通り過ぎる。

園芸社員 「何か言ったか、新人くん?」
友也   「いえ・・・」
園芸社員 「(小声で)あいつ、ときどき様子が変なんだよなぁ・・・」

同僚と会話しながら駐車場を通り過ぎる園芸社員。
園芸社の駐車場を見渡せる路上に停まっている車。
スモークガラスの隙間から指先大のマイクが園芸社に向けられている。
車の運転席で携帯電話のイヤホンを外す日垣。



セントへレナ記念病院
玄関前。
友也らしき運転手が映っているパーキングの映像コピー。
コピーを手に話しこんでいる警官Aと警官B。

警官A 「どこかで見たような気もするけどなぁ・・・」
警官B 「めがね、めがね(眼鏡を取りだす)」
警官A 「やっぱり気のせいか・・・」

コピーを顔に近づけて思い出そうとする警官B。
鈴木と湊が病院から出てきて警官たちの様子に気づく。

鈴木  「何か心当たりでも?」
警官A 「ええ、あるようなないような・・・」
警官B 「待ってください。あっ思い出した。ここんとこ、毎日来てる・・・」
警官A 「あっそうだ。花屋、っていうか植木屋? 観葉植物を運んでくる奴の・・・」
湊   「そいつに似てるのか?」
警官B 「いえ、はい帽子の形が・・・」

一枚のコピーにカストロ帽タイプの帽子が写っている。
警官たちと湊らが立ち話をしているのを駐車場から目撃する友也。

友也  「・・・湊さん(呟く)」

死角側から軽トラックに乗りこむ友也。
静かに駐車場から出ていく友也の軽トラック。
反射的に湊は車を見て、ナンバーをメモる。

鈴木  「帽子かよ。それでそいつは?」
警官B 「あの辺に。あれ、いつの間に・・・」

ぽっかり空いた駐車スペースを指さす警官A。



園芸社駐車場
軽トラックから荷おろしをしている友也。
友也はカストロ帽を被っている。
突然、湊がひとりで現れる。

湊   「元気そうだね」
友也  「あっ、湊さん」
湊   「驚いた?」
友也  「ええ、まあ、」
湊   「仕事、真面目にやってる?」
友也  「はい(帽子をとる)。何かご用ですか」
湊   「うん、ちょっとね。君のお兄さんが神戸に来てて・・・」
友也  「兄貴が・・・」
湊   「友也くんのこと探してた。理由は聞かなかったけど」
友也  「そうですか・・・」
湊   「お兄さんに友也くんの居場所、教えてもいかな」
友也  「ちょっと、待ってください。考えさせて・・・」
湊   「そうだな。(ポケットから名刺を取り出す)お兄さんの名刺だ。君から、連絡するといい」

名刺を受け取り、視線を落とす友也。