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フリーソウルズ Gゼロ ~さまよう絆~

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#9. 揺れ動く




佐原昭吉宅(夜)
千晶の部屋から悲鳴があがる。
千晶が部屋から飛び出してくる。

昭吉  「どうした、優里?」
千晶  「(昭吉に向かって)あんた、誰? ここはどこ?」
昭吉  「何かあったのか、優里。えっ?」
千晶  「優里って誰? うちは千晶。青山千晶じゃ」
昭吉  「そう、以前はそうだった。でも今は私の養女だ」
千晶  「養女? あたしが? 何を言うとるのかわからん。あたしはなんでこんなとこにおるん?」
昭吉  「(狼狽えて呼ぶ)和田、和田。優里が、優里が・・・」

千晶が素足のまま玄関から共用廊下に飛び出す。
和田が追いかける。
しばらくして和田が千晶を連れて戻ってくる。

昭吉  「優里か? 優里か?」
千晶  「ええ、あたしよ、おじい様。優里よ」
昭吉  「よかったぁ」
千晶  「あたし何かおかしなことを?」

素足のままの優里を見て、悲しく微笑む昭吉。

昭吉  「いいや、なんでもない。なんでもない。優里の心配することじゃない」



取調室
奈須が馬場を尋問している。
馬場は首を横に振って強く否定している。



走行中の車内

湊   「唐津の犯行当夜のアリバイは不完全だ」
鈴木  「ひとりで残業していたというやつですね」
湊   「出退勤の記録は確かに夜遅くまで仕事をしていたことを示しているが、そんなものはいくらでも改ざんできる。しかし、たとえアリバイを崩したとしても、唐津イコール、モンドだという物的証拠がない」
鈴木  「馬場はどうですか?」
湊   「馬場は何も知らんだろう」
鈴木  「唐津をモンドだと知って殺しかけた奴ですよ」
湊   「馬場と唐津の接点がわからん。日垣の殺された現場は、殺意に満ちていた。馬場にふたりを殺すどんな動機がある?」
鈴木  「馬場が宝石商事件に関わっていたとしたら?」
湊   「馬場が第四の男で、四人による仲間割れというわけか?」
鈴木  「分け前の独り占めを狙った」
湊   「案外、そんなところかも知れんな。まだ、仲間がいるかも知れない。鈴木くん、小森友也の周辺から目を離さんようにな」
鈴木  「湊さんは?」
湊   「私は、もう一度馬場に会ってくる」



警察病院
車を降りた鈴木に敬礼する警官A

警官A 「鈴木刑事、異常ありません!」
鈴木  「ご苦労さまです。あ、一緒に来てもらってもいいですか?」

警官Aを伴って友也の病室に向かう鈴木。



取調室
馬場に向き合う湊。

湊   「馬場くん、屋上で俺に撃たれた後、何か言いかけたよな。あれ何て言いたかったんだ?」
馬場  「すみません、警部。まったく憶えていません」
湊   「あいつが、どうとか・・・」
馬場  「すみません・・・」



警察病院
友也の病室。
眠る友也に話しかける遠藤。
遠藤は厚い冊子を持っている。

遠藤  「トモ、おかしな若者に会ったよ。人が人に憑依するみたいな話を真剣にするんだ。資料をもらった。“人格転移現象の調査と検証に関する報告書”通称トランシングレポートというらしい。ちょっと目を通したが、暇潰しにちょうどいい。トモ、聴こえていたら返事してくれ」

友也がゆっくり左手親指を上下させる。

遠藤  「(驚いて)トモ、いま指を動かしたか? 僕の声が聴こえているのか? 聴こえているならもう一度指を動かしてくれ」

友也が親指を立てて少し曲げる。

遠藤  「すごい、トモ。聴こえるのか?」

”先生、先生”と呼びながら、部屋を飛び出す遠藤。
遠藤が去った病室の前。
様子を見にきた鈴木が警官Aを引き連れて現れる。
病室の前で張り番をしている老刑事に鈴木が言う。

鈴木  「どうです、小森友也の様子は?」
老刑事 「変化なし。あっ、遠藤監査官が見舞いにきとる。いま、先生を呼びに出ていったが・・・」
鈴木  「そうですか。ご苦労様です。少し休んでください」
老刑事 「サンキュ。ちょっと一服してくるわ」

老刑事に敬礼し、見張りを交代する警官A。
老刑事を見送る鈴木。

鈴木  「小森の様子を確認してくる」

警官Aを入口に立たせて、ひとりで友也の病室に入る鈴木。
ベッドを囲むカーテンを開けると眠りについている友也がいる。
友也の傍らに腰掛ける鈴木。

鈴木  「小森よぉ。聞こえてたら答えてくれよ。宝石商事件の仲間にお前が裏切られたとして、どうして馬場巡査が日垣に殺意を抱くんだ? それともレクター博士よろしく、お前が馬場を洗脳したか。・・・なバカな・・・」

友也の親指に電極コードがからんでいる。
閉じていた友也の目が開く。

鈴木  「小森、どうした? 聞こえてるのか」

友也の苦痛に満ちた瞳。
友也の親指に力がこめられるとコードが張りつめる。
生命維持装置が傾く。

鈴木  「痛むのか。力を抜け、小森」

コードが1本抜け、スパークが起きる。
なおも配線を手繰り寄せることを止めない友也の手を鈴木が両手で抑える。
包帯の間から強烈な友也に視線を感じる鈴木。
その視線に吸い込まれる鈴木。
生命維持装置の数値がランダムに変化する。
スパークが連続して起こる。
スパークが照明器具にまで連鎖しカーテンの内側に青白い閃光が走る。
発光が収まり静けさに支配される病室。
友也から手を離す鈴木。
カーテンが開く。
虚ろな表情で、やや口を半開きにして立つ鈴木。
ふらふらと病室から出ていく鈴木。

警官A 「鈴木先輩、鈴木刑事!」

警官Aが呼び止めるが、廊下をふらふらと歩き続ける鈴木。
逆方向から福住女医を伴って病室に入る遠藤。
廊下の角を曲がる鈴木を目で追いながら病室からの遠藤の声を耳にする警官A。

福住  「(倒れかけた生命監視装置を見て)何があったんです?」
遠藤  「きっと友也が・・・。トモ、指を動かしてくれ。トモ、トモ。先生、さっきは僕の呼びかけに、親指を、親指を動かして返事をしたんです。トモ、トモ・・・」



市役所・市民相談課
左腕を三角巾で吊った唐津が登庁する。
女子職員たちが唐津に労りの言葉をかける。
上司が唐津にねぎらいの言葉をかける。
職員、上司に頭を下げる唐津。



佐原昭吉宅

和田  「(千晶に)よくご覧ください。これが、千晶さまが佐原千晶として養子縁組したときの書類と戸籍謄本です」
千晶  「そんなもの、いくらでもパソコンで作れるわ」
和田  「なら、存分にお調べください」
千晶  「そうする」

部屋に戻る千晶。

和田  「困りましたね、会長」
昭吉  「ああ、最近、青山千晶がよく顔を出す。天根博士に相談してみよう」
千晶  「(唐突に)出かけるから・・・」
昭吉  「和田、ついていってやってくれ」
和田  「はい」



警察病院
友也の病室
生命監視装置をあらためてセッティングし直す技師と看護師。
瞳孔や脈を診、病室をあとにする福住医師。
目を閉じたまま微動だにしない友也。
死んだように動かない友也。
病室の端で首をうなだれている遠藤。
友也の指にそっと手を触れ、病室から出て行く遠藤。