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フリーソウルズ Gゼロ ~さまよう絆~

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#10.花壇の死体



市役所
千晶を乗せて和田が運転する車が市役所前に停まる。

千晶  「(和田に)あんたはここで待ってて」

急ぎ足で市役所の玄関に向かう千晶。
玄関先にぼんやり突っ立っている鈴木を弾き飛ばす千晶。
バランスを崩しながら千晶の背中を見つめる鈴木。
市民相談課に出向く千晶。

千晶  「(カウンター職員に)あたし青山千晶っていいます。佐原昭吉という人の養女になったと聞かされとるんだけど、本当かどうか調べてもらえます?」
職員  「はぁ、しばらくお待ちください」
千晶  「なんか違う名前で呼ばれて、気持ち悪いんだわ」

ロビーのソファに腰かける千晶。

鈴木  「佐原の養女? 違う名前?」

不思議な面持ちで柱の陰から千晶の様子を眺める鈴木。
クレーマーでも来たかのように千晶を訝しげに眺める職員たち。
暇を持て余していた職員も周囲に集まる。

千晶  「ああ、お腹すいた・・・」

腹を押さえ、視線を泳がせる千晶。
驚いたように目を見開く千晶。
カウンターの向こうにいる男の顔に目が留まる千晶。
カウンター内にいた唐津と千晶の目が合う。
背筋に冷たいものを感じる千晶。
『佐原昭吉 養女』と記されたメモ紙を手に千晶を見つめる唐津。

唐津  「私が応対しよう」

職員に言い残し、千晶に近づく唐津。
近づいてくる唐津を見つめる千晶。

薄暗い屋敷の窓ガラスに反射した唐津の殺気だった眼。

千晶に近づく唐津の眼が殺気だつ。
あとずさりする千晶の腕をさりげなく掴む唐津。

唐津  「お客様 応接室のほうへ」

カウンターから死角になる場所へ千晶を連れていく唐津。
千晶の目から恐怖に色が消えない。

唐津  「僕をご存知なのですか?」

首を激しく振る千晶。

唐津  「あなた、優里さんですよね。佐原優里さん」

首を振る千晶。

唐津  「化粧を変えた? それとも整形でもしたのかなぁ?」
千晶  「違います。あたしは・・・」
唐津  「僕が逮捕されたら証言しようと、いまは別人のふりをしている・・・」

ぎくっと怯えた表情に変わる唐津。
唐津の後頭部に拳銃が突きつけられる。
拳銃を握っているのは鈴木。
千晶に立ち去るよう目で合図する鈴木。
怯えた表情のまま小走りに市役所から出ていく千晶。

唐津  「(横目で背後を見ながら)誰だ、お前?」
鈴木  「モンド、無駄話は終わりだ」



市役所屋上
室外機の上に外向きに怯えながら立つ唐津。
唐津は目隠しされ、猿ぐつわを咬まされている。
口をモゴモゴさせ座りこむ唐津。

鈴木  「座るな、立て、モンド!」

唐津の耳元で撃鉄を起こす鈴木。
ゆっくり立ちあがる唐津。
乾いた銃声音とともに唐津の身体が宙に舞う 。



摩耶大学
天根与四郎研究室実験スペース
モニタールームの計器類が稼動している。
液体ヘリウムのボンベの接続をチェックする佐伯。
別室で緊張の面持ちで待機している井上敏和被験者と高橋元太被験者。
両名色違いの薄い手術着をまとっている。
モニタールームの後方に並べられた4台の長椅子。
佐伯に案内されて着座する八津川と平松学長。
防磁壁に囲まれた実験スペース。
間隔を空けて脳磁図測定装置ハイパーメグのシステムユニットが2台並んでいる。
RTブースのユニットに身を沈める細身の井上。
LTブースには小太りの中年男性・高橋元太が陣取る。
コントロールルームで佐伯が井上と高橋にアナウンスする。

佐伯  「実験は、一時間程度を予定しています。もし身体に変調があれば、すぐに言ってください」

モニタールーム後方のドアが開き遠藤が入室する。

政岡  「遠藤さん・・・」
遠藤  「すみません、遅くなっちゃって・・・」
天根  「どうぞ、後ろの席へ」

遠藤が長椅子の端に腰かけ、遠藤の隣に資料を抱えた政岡が座る。

政岡  「右の男性が井上さん51歳。廃品回収で生計を立てておられます。左側は高橋さん63歳。高橋さんは勤続30年の警備員さんです。両名とは調査研究を通じて知り合い、トランシングを経験した可能性がある対象者として今回の実験への参加をお願いしました。決め手は、ストレス下での脳波の波形が似ていることと健康体であったこと。そしかしながら、うまくいくかどうかはまったく未知数です」
佐伯  「(マイクに向かって)それでは、実験を始めます。正面にあるモニターを見て、できるだけリラックスしてください。(振り向いて天根に)では」
天根  「(ギャラリーに向かって)これより実験を開始しますが、非公式実験ですので、くれぐれも今回の実験結果の口外は無用に願います」

モニタールームのガラススクリーンに、ふたつの立体脳磁図がホログラムで浮かびあがる。
イメージで作成された脳深奥部神経野の活動が局所的に活発化し発光する。
立体脳磁図は局所的に色彩を帯び回転している。
それぞれの脳画像の横に波形グラフが立ちあがる。
デジタル時計の時刻は15:30 。



市役所
敷地内の花壇真ん中にうつ伏せに倒れている男。
ひとりふたりと遠巻きに集まる野次馬。
写真を撮る者、どこかに電話する者。
騒ぎを聞きつけた数人の職員が市役所から出てくる。
職員たちに混じって役所を出る鈴木。
花壇を一瞥して群衆から離れていく鈴木。

神戸市街地
市役所周辺では和田がなおも千晶の名を呼びながら探している。

和田  「千晶さま〜。千晶さま〜。あ、優里さま〜。優里さま〜」

市役所を出て雑踏に紛れた鈴木が和田の声に反応する。
和田を見つけて詰め寄る鈴木。

鈴木  「おっさん、市役所から逃げた子を探しているのか」
和田  「ええ、まあ」
鈴木  「どうして優里の名を?」
和田  「どちら様か存じませんが、あなたには関係ないこと」
鈴木  「佐原優里は病院のベッドで眠っているはずじゃぁ?」
和田  「だから、あなた様には関係ないと・・・」
鈴木  「(激高して)関係ないだとぉ(和田の襟元を掴む)」
和田  「暴力はいけません。年寄に暴力は・・・」

我に帰り和田の襟元から手を離す鈴木。

鈴木  「あの子、どこへ行った?」
和田  「それが・・・」


困惑の表情の和田
ブランドショップが立ち並ぶ外国人居留地を歩く千晶。
飾られている洋服にたびたび目を留める千晶。
ガラスに映った自分の姿を見て首を振る千晶。



市役所
パトカー、警察車両、救急車が次々と市役所に到着する。
“お嬢様。千晶様”と叫びながら、和田が市役所の周囲を探し廻っている。
市役所玄関広場の花壇に人垣ができている。
野次馬を排除する警官たち。
ロープをくぐって花壇に入る湊。
花壇の真ん中で唐津が、土にめりこんで、うつ伏せに倒れている。
写真を撮り終えた鑑識Aが死体を検分する。
唐津の顔に絡みついた三角巾をはぎ取る鑑識A。

湊   「やられた。唐津だ」
鑑識A 「左後肢に射入口。これは致命傷ではありません。全身の骨が砕けています。おそらく役所の高いところから転落して絶命したものと・・・」

庁舎屋上を見上げる湊と鑑識A。
建物から手帳を手に出てくる捜査員A。

捜査員A「湊さん、防犯カメラの映像にガイシャと歩く不審人物が・・・」