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フリーソウルズ Gゼロ ~さまよう絆~

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#8.人格転移




警察病院
正面玄関に救急車が停まる。
馬場を乗せたストレッチャーが救急車からおろされる。



市役所
市民相談課のあるフロア。
フロア全体が警官によって閉鎖されている。
ロビーのチェアで、唐津から話を聞く湊と鈴木。
唐津の隣には、唐津の上司が同席している。

唐津  「何が何だか、さっぱりわかりません」
上司  「警官が市民に、しかも市役所の職員に訳もなく暴力を振るうとは、言語道断だ。厳重に抗議する」

湊が鈴木に目配せする。

鈴木  「すみません。ちょっとこちらへ」

上司に離席を促す鈴木。
ふたりになる湊と唐津。

湊   「モンドと呼ばれたそうですが、何か心当たりは?」
唐津  「いいえ、まったく。モンドなんて聞いたこともありません」
湊   「失礼ですが、十月七日午後七時から九時ごろはどちらにおいでしたか」
唐津  「十月七日ですか。(手帳を見て)その日は十時ごろまで役所で残業でした。磁気カードで記録が残るので、調べていただいたら判ると思いますよ、刑事さん」

笑みを浮かべる唐津。
笑みを返す湊。



警察病院
馬場を乗せたストレッチャーが廊下を走る。

看護師 「(伴走しながら)血圧低下40、35」

処置室で乾燥した上皮を剥がされている友也。
友也の目は閉じられている。
エレベーターの扉が開く。
馬場をのせたストレッチャーが友也のいる処置室の前を通り過ぎる。
友也の目が大きく開く。
友也の上体が首と肩を起点にガクンと弾む。
手術室に運びこまれる馬場。



摩耶大学キャンパス
トラックが大きな荷物を校内に運び入れている。
池端の小径を歩く大村と天根。

大村  「よかったですね、天根教授。ハイパーメグの新規導入と実験の実施が認められて」
天根  「幸運でした」
大村  「幸運だけではないでしょう。誰かいいスポンサーでも見つけたのですか」
天根  「それは聞かないでください」
大村  「実験はいつから」
天根  「近日中に非公開で・・・」



佐原昭吉宅
マンションの最上階である。
ひとりバルコニーの手すりにもたれ、遠くの海をぼんやり眺める千晶。
バレエ教室の風景を思いだす千晶。

(回想)
コーチ 「佐原さん、ほんとにバレエやっていたの?」
千晶  「はい、少し
コーチ 「全然、柔軟がなってないわ。一からやり直しね」
千晶  「・・・はい・・・」

教室に他の生徒たちの笑い声が起こる。
赤面する千晶。

コーチ 「佐原さん、バレエを習いにきてるのよね。もう少し食べる量とかに気をつけたらどうかしら・・・」

ニヤニヤするクラスの生徒たち。 
生徒たちが千晶のやや丸みを帯びてきたボディラインを茶化す。
(回想終わり)


千晶の部屋
トゥシューズが部屋のゴミ箱に捨ててある。
バルコニーから沈む夕陽を見つめる千晶。
悔し涙が止まらない千晶。
チャイムが鳴り、昭吉が帰ってくる。

昭吉  「優里、帰っていたのか」
千晶  「うん、バレエのレッスンが早く終わって」
昭吉  「そうかそうか。お腹すいたろう。夕食にしよう」
千晶  「おじい様、優里、夕飯要らない」
昭吉  「どうして? どこか具合でも悪いのか」
千晶  「ちょっとダイエットしなきゃ、って思って」
昭吉  「どこが肥えとる? 優里は少しも肥えとらんぞ」
千晶  「ねぇ、おじい様、明日お友だちとショッピングに出かけたいの。少しお小遣い、いいかしら?」
昭吉  「そうか、優里、もう友だちができたのか。行きなさい、行きなさい」

満足そうに笑う昭吉。
嘘をついたことに後ろめたさを感じながら、自室のドアを閉める千晶。



兵庫県警本部 
取調室
腹部に包帯が巻かれた馬場と奈須が事務机を挟んで対峙している。

奈須  「ちゃんと説明しろ! ネタはあがっているんだ!」
馬場  「ですから、奈須係長。まったく記憶がないんです」
奈須  「そうか、あくまでシラを切り通すつもりか。一課の取調べを、甘く見るな。必ずゲロさせてやる」

取調室を出てもなお興奮が収まらない奈須。
取調べを見ていた遠藤。

奈須  「チクショウ、強情な奴だ。認めればそれなりにやり方があろうっていうのに」
遠藤  「取調べ、見せてもらいました。馬場巡査、本当に何も覚えていなので はないでしょうか。精神鑑定を受けさせてみては?」
奈須  「まだ早い! どこも悪くないと担当医も言っている。あんた・・・(冷静を取り戻して)すみません監査官。でも、これは私らのヤマなんで、サッチョウのエリートさんは口を・・・や、何でもありません。(間があって)弟さん、お加減は?」
遠藤  「はぁ、厳しい状態は変わりません。きょう二回目の移植手術がありました・・・」
奈須  「そいつは心配ですね」
遠藤  「いえ、あいつの場合、自業自得ですから」
奈須  「弟さんをあんな目に遭わせた野郎をとっ捕まえようと思ったら、馬場がとんでもないことをしでかしやがって・・・。理由がわからんのです。動機が。遠藤さん、弟さんと馬場と何か接点がありませんでしたか。例えば馬場が病室で弟さんと何か話をしていたとか」
遠藤  「弟は今、喋ることができません。動かせるのは目だけです。目だけで意思疎通できる相手は、多分この私だけだと思いますし・・・」
奈須  「そうでしょうね・・・(頭を掻く)」

捜査員Aが取調室に現れる。

捜査員A「係長、本部長がお待ちです。記者会見が始まると・・・」



摩耶大学キャンパス内カフェ
テレビがニュースを放送している。
談笑する学生たちから離れて座り、ハンバーガーとコーラを食す佐伯と政岡。

テレビ ”・・・の市街地で相次いで一般市民が犠牲になった事件は、現役警察官の犯行であるとの警察発表がありました。事件を起こした警察官、馬場武史は、兵庫県警生田署に勤務する巡査で、きょうの午後、警察病院から県警本部に移送されました・・・”

政岡  「(テレビを振り返り)え、今、何て言ってました?」

リモコンでボリュームを操作する佐伯。
トイレで死んでいる日垣の静止画が放映されている。
テロップに 
”警察官、市民に発砲”

テレビ  ”・・・馬場容疑者は取り調べで、職務離脱も含めて病院に運ばれるまでの間の一切の記憶がないと犯行を否認しており、動機については・・・”

佐伯  「ん、警官の発砲事件?(テレビ映像を見ながら)わっ、ひどいなぁ。こんなことやって記憶がないないなんて、よく言うよな」
政岡  「ねぇ、警官の名前、ババって言いませんでした?」
佐伯  「ああ、言ったかも。(画面に馬場の顔写真)馬場武史、二十三歳だって。ほら、顔写真」
政岡  「オーマイガッ! 馬場くんだ」
佐伯  「知り合い?」
政岡  「高校のときの友だち」
佐伯  「男友だち? 告白したほう? されたほう?」
政岡  「(視線で佐伯の軽口を封じて)馬場くん、ラグビー部のキャプテンで・・・」
佐伯  「モテたろ、そいつ」
政岡  「ん、でも決まった彼女がいたから、みんな適当に距離は置いてました。警察官になったことは人づてに聞いて知っていたけど、彼がまさか、こんなこと・・・」
佐伯  「人は変わるよ」