小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

フリーソウルズ Gゼロ ~さまよう絆~

INDEX|16ページ/29ページ|

次のページ前のページ
 

無愛想にタクシーを発車させる運転手。
坪内光世探偵事務所に線を引く運転手。
市民データバンクに線を引く運転手。
後部座席で陶器の欠片を握りしめる馬場。
馬場の手のひらに血が滲んでいる。



ニコニコ信用調査
事務所のドアを叩く馬場。
事務所には長い巻き毛の若い女性事務員ひとりしかいない。

事務員 「いらっしゃいませ。ご用件は」
馬場  「こちらに、ツジヤマと呼ばれている探偵はいらっしゃいますか?」

怪訝そうな顔をする事務員。

馬場  「従業員名簿、見せてください(警察バッジを事務員に見せる)」
事務員 「少々お待ちください。(戸口の外の廊下に向かって呼ぶ)所長、警察の方が・・・」

水滴を振り落としながら共用トイレから出てくる日垣。

馬場  「(帰室した日垣を見て呟く)・・ツジヤマ・・・」
日垣  「(無礼な物言いで)警察の方、何のご用でしょう? 」   


共用トイレ内
馬場に襟首を掴まれ、トイレの壁にたたきつけられる日垣。

日垣  「乱暴だなぁ・・・」
馬場  「探したよ」
日垣  「何なんだ、あんた。訴えるぞ・・・」
馬場  「訴える? そんなことが言える立場かな、ツジヤマくん」
日垣  「(一瞬うろたえ)何の話だ?」

警棒で日垣の首根を押さえる馬場。

馬場  「教えろ。モンドの居場所」
日垣  「だから、何の話だ。モンドなんて奴知るか」

日垣の鎖骨に警棒を振りおろす馬場。
へたりこんだ日垣の頭、顔、防御する手、背中に何度も警棒を振りおろす馬場。

馬場  「言え、モンドはどこにいる?」
日垣  「待て、待ってくれ。教えてやりたいが、言ったら、俺がモンドに殺される」

なおも執拗に日垣に暴力をふるう馬場。
血しぶきが壁、床に飛び散り、瀕死の状態になる日垣。

日垣  「わかった。わかったから、やめてくれ。モンドは、市役所に勤めている。市民相談課だ」
馬場  「嘘じゃないだろうな」
日垣  「本当だ。行けばわかる。お前、ハンガーの連れか?」

返り血を浴びた顔をトイレの鏡に映す馬場。

馬場  「さあな」

警棒を鞘に収める馬場。
洗面台に飾ってある花を日垣に放り投げる馬場。
花を胸の前で掴んだ日垣が安堵の溜息をつく。

馬場  「ところでツジヤマ、あんた松田優作のファンなんだろ?」
日垣  「えっ?」
馬場  「真似させないよ」

銃声が一発、事務所に轟く。



大衆食堂
うどんをすする湊。
携帯電話が鳴る。

湊   「はい、湊。えっ、巡査がどうしたって? 持場を離れた? 近頃の若い奴は‥‥。放っておけ、代わりはいくらでもいるだろう。‥‥なに、発砲事件?」

食堂の外に出る湊。

湊   「その巡査が、探偵を殺したというのか。(爪楊枝を口に咥えながら)金か、仕事の不満か? どうして俺のところに電話してきた? ・・・ツジヤマ?」



ニコニコ信用調査トイレ
トイレの便器に頭を突っ込み、後頭部を撃ち抜かれて死んでいる日垣。
花が握られている日垣の手の袖をつまんで持ちあげる湊。

湊   「この花は、仏が持っていたのか(鑑識に問う)」
鈴木  「ええ、そのようです。それが何か?」
湊   「いや、別に」

凄まじい死体の傍に不似合な綺麗な花が散っている。

湊   「鈴木くん。それで・・・」
鈴木  「第一発見者の事務員ですが、動転していていまいち要を得ません。が、制服警官が、“ツジヤマはいるか?”と訪ねてきて、そいつがこの事件を起こしたことは間違いなさそうです」
湊   「この男が、“ツジヤマ”、なのか・・・」
鈴木  「それで、その警官、しきりに“モンドはどこだ?と尋ねていたそうです」
湊   「“ツジヤマ”、“モンド”、それに、“ハンガー”。小森友也の暗号メールに出てくる名前だ」
鈴木  「仲間割れでしょうか」
湊   「わからない。ところで馬場巡査の行方のほうは?」
鈴木  「捜索中です。まだ発見に至っていません」
湊   「馬場巡査の経歴は?」
鈴木  「はい。(手帳を開く)馬場武史二十三歳。法律の専門学校から警察学校に入り、任官されて三年目。勤務態度に問題はなく・・・」
捜査員C「(トイレのドア越しに)湊刑事」
湊   「どうした?」
捜査員C「ガイシャがホシにモンドの居場所を教えるのを、事務員が聞いたそうです」
湊   「モンドの居場所?  どこだそれは? 」



市役所・市民相談課
窓口の担当者に小声で伝える馬場。

馬場  「あの、モンドいるかって、大声で叫んでもらえませんか」
職員  「(戸惑いながら)えっ? モンドさん?」

らちがあかないので叫ぶ馬場。

馬場  「モンド、モンドはいるか!」

立って事務作業していた唐津が一瞬、振り向く。
馬場と視線が合った唐津はすぐに背中を向ける。

馬場  「おい、そこの男。こっちを向け」

馬場が拳銃を振り向けたので、一斉にしゃがみこむ職員。
硬直した唐津が振り向く。

馬場  「モンドだな」
唐津  「いえ、私は唐津誠。相談課の係長をしています。人違いだと思います」

銃を構えたまま、唐津を引きずり出す馬場。

唐津  「何なのですか、私が何をしたというのですか」


市役所屋上
抵抗する唐津を、非常階段から屋上に連れ出す馬場。

唐津  「誰だ、あんた。何者だ」
馬場  「十年前の洗濯屋だよ」
唐津  「洗濯屋? ハンガー?」
馬場  「モンド、俺はただ、死んだおふくろの墓を、ちゃんと作りたかった。俺をひとりで育ててくれたおふくろのな。たったそれだけのちっぽけな願いを、モンド、あんたは踏みにじったんだ」
唐津  「お前、ハンガーの連れか? そうだろ? 何があったか知らないが、ハンガーはもう生きて病院から出られない。お前にハンガーの取り分をやろう。どうだ?」
馬場  「うるさい! 口を開くな! 手は頭の上。真っ直ぐ歩け。登れ」

防護柵際の室外機の上に乗るよう唐津を促す馬場。
渋々四つん這いになりながら室外機の上に乗る唐津。
室外機と防護柵は同じ高さで柵の外は遮るものはない。
ちらっと見た地面が20メートルは下にあることに震えあがる唐津。

馬場  「立て、モンド。そこに立つんだ」

屋上出入口のドアが開く。
湊が馬場と唐津を見つける。

湊   「早まるな、馬場!」

湊が抑えた口調で馬場に言う。
後から来た鈴木が銃の照準を馬場に合わせる。
湊を一瞥してすぐに唐津に向き直り銃を構え直す馬場。
銃声が二発轟く。
発砲したのは湊。
凍りつく唐津の表情。
馬場が銃を構えたまま崩れ落ちる。
捜査員数名が続いて屋上にやってくる。
馬場に駆け寄る湊。 

鈴木  「救急車!」

唐津の身柄を確保する捜査員たち。

湊   「馬場。しっかりしろ。急所は外した」
馬場  「・・・湊さん・・・」
湊   「どうして、こんなことを? 動機はなんだ?」
馬場  「あいつが・・・、あいつが・・・」
湊   「あいつが、どうした?」

口から血を吐き、気絶する馬場。