小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

フリーソウルズ Gゼロ ~さまよう絆~

INDEX|11ページ/29ページ|

次のページ前のページ
 

湊   「バカ!」

車を飛び出し、アパートの階段を駆けあがる湊と鈴木。
小森と小さく手書きされた表札にある扉を叩く鈴木。

鈴木  「小森さん、小森さん」

小森友也の部屋の戸口をノックするが返事がない。
ノブを廻す鈴木。
開いたドアの隙間から灯りの点いた部屋を覗く鈴木。
手をつけてないピザが卓袱台に放置してある。
土足のまま入り、トイレと押入れを開け放つ鈴木。
押入れもトイレも室内すべてもぬけのから。
誰もいない室内を見渡し肩を落とす鈴木。



公園(深夜)
自転車を乗り捨て、リュックを担ぎ、赤キャップとスタジャンをゴミ入れに脱ぎ捨てる友也。
尻ポケットから取りだしたカストロ帽を目深に被る友也。



国道2号線(深夜)
サイレンを鳴らし幹線道路を疾走する覆面パトカー。
無線の声 「緊急配備、緊急配備。宝石商一家殺傷事件の被疑者、小森友也が自宅から逃走・・・」



兵庫県警副次長室
カバンを机の上にスマートフォンを置いたまま、湊からの連絡を待つ遠藤。
眉間を指で揉む遠藤。



六甲山貫道(深夜)
六甲山系を縦断する道路を走る黒いセダン。
運転しながら、助手席に置いた荷物に話しかける友也。

友也  「母ちゃん、永い間、窮屈だったろう。もうすぐ金が入る。そしたら、大きな墓、建ててあげるからね」

リュックサックの口からのぞく骨壷と遺影。


裏六甲
閉鎖したレストランの駐車場(深夜)
セダンのヘッドライトが、建物と車の影を映し出す。
ジャリジャリと音をたてて車が停まる。
廃屋横から別の車がスルリと動き出し、セダンの横に停まる。
日垣が車から降りてくる。

日垣  「つけられなかったろうな、ハンガー」

頷く友也。

友也  「分け前をもらいにきた」
唐津  「(廃屋の物陰から現れる)その前にハンガー、チーム仕事人は今夜で解散する」
友也  「そ、そりゃそうだろ。警察やマスコミが、がんがん騒いでいる。もうできない、だろ?」
日垣  「俺とモンドは、またやる。けどハンガー、お前はもうできない」
友也  「俺だけ、もうできない? どういう意味だ?」
日垣  「相変わらず鈍い奴だな。(友也の肩に腕をまわし)知ってんだよ、お前の素性」
友也  「別に、本名や仕事場があんたたちに知れたって、どうってことはない」
唐津  「問題なのはお前の兄貴だ」
友也  「兄貴? 兄貴がどうした? 兄貴とはもう十年以上会ってない」
日垣  「お前の兄貴がサツだったとはな」

一瞬気まずい表情の友也。

唐津  「どうして黙っていた? そんな大事なこと」
友也  「だから、兄貴とは子供の頃に別れて以来、今まで一度も会ってない。兄貴がどこで何をしていようと、俺には関係ない」
日垣  「遠藤博之36歳。警察庁で内部監査を担当。現在兵庫県警に出向中。名字が違うから、気がつかなかったよ」
友也  「なんで、なんでそんなこと?」
唐津  「お前には前科がある。捜査の手がお前に伸びることは想定済みだ。お前が捕まったとしても、俺たちの素性がばれる心配は、まずない。けどサツの兄貴がいたとなると、話は別だ。尻尾をつかまれかねない。だからこういう結論に達した」
日垣  「ハンガー、いや小森友也。お前には死んでもらう」
友也  「待てよ。ふたりとも、待ってくれよ」
唐津  「すまんな。そういうことだ。殺しの罪も被ってもらう」

日垣にスパナで後頭部を殴られ気を失う友也 。


六甲山系渓谷、崖上
急峻な崖の上に車が停まる。
気絶している友也を助手席から運転席に移乗する日垣。
両手両足を縛られ猿ぐつわをされている友也。
失神から気がつき手足をばたつかせる友也。
助手席に液体のつまった2リットルのペットボトルが2本。
後部座席にも複数のポリ容器と、友也のリュックが放置されている。
唐津が車の窓ごしに友也に言う。

唐津  「盗みと殺しの証拠はトランクに積んである。警察の手が迫ってきた犯人が、真夜中に逃走を図ったものの、運転を誤って谷底に転落したという設定だ。ガソリンに引火するよう仕掛けもしてある。だから迷わず成仏してくれ」
友也  「(猿ぐつわを噛んで)どうして信じてくれない。ふたりとも、仲間だと思っていたのに」
日垣  「仲間だと。笑わせるな」
唐津  「仲間を売るようなマネをする奴は仲間じゃない」
日垣  「それに俺たちは、簡単には捕まらないよ。俺たちにはまっとうな仕事があるからな」
友也  「まっとうな仕事?」
日垣  「冥土の土産に教えてやろう。モンドは市民に奉仕する仕事。俺は、ほらあれ、松田優作が一番似合っている・・・」
唐津  「ツジヤマ!(一喝する)」
日垣  「無駄話は終わりだ。じゃ、あばよ」

車を後ろから押す日垣と唐津。
のりを越え、頭から崖をすべり落ちるセダン。
途中から横回転しながら谷底に転落していく。
谷底の地面に激突しエンジンルームがへしゃげる。
タイヤハウスから火の手があがり、やがて大きな爆発音とともに火柱があがる。



六甲山系渓谷、崖下(明け方)
崖の上で光るパトライト。
道路に十台近い警察の車列。
大破した車の周辺にはまだ小さな炎と煙が燻っている。
車から十数メートル離れて倒れている友也。
数人の警官や捜査官が、煤と血にまみれて倒れている友也を取り囲んでいる。
その他大勢の警官、鑑識員が現場周辺で遺留品の捜索にあたっている。

警官C 「ありました! ウィンチェスター社の猟銃です」
鈴木  「よし!(小さくガッツポーズ。無線のマイクを手にする)本部、応答願います。凶器の猟銃が見つかりました。あと盗品と思われる貴金属が少し。強殺の犯人に間違いありません」

遅れて崖下に降りてくる湊。
担架に乗せられ救急ヘリで吊りあげられる友也。
現場でその光景を見上げながら悲痛な面持ちになる湊。



兵庫県警本部
捜査一課で無線のやりとりをする那須係長。
傍らで無線の声に耳を澄ます永井本部長。
廊下を慌しく行き来する捜査員たち。

奈須  「それで、鈴木。ホトケさんは確かに小森なのか?」
鈴木  「確かだと思われます」
奈須  「身元を確認するものはあったか」
鈴木  「いいえ、まだ・・・」
奈須  「焼死体だろ。偽装工作の可能性だってある。さしあたり、小森だと証明できるものを探せ」



同フロア廊下
トイレの洗面所で顔を洗って廊下に出てくる遠藤。
捜査本部室から廊下に響く奈須の声に思わず立ち止まる遠藤。

鈴木  「係長、焼死体ではありません。まだ死亡は確認されていません。救急ヘリに収容されました」
奈須  「死んでない? 小森友也はまだ息があるのか!」
鈴木  「はい、そのようです。搬送先に向かいます」

一課のドアを開ける遠藤。

永井  「遠藤さん(何か?という顔)」
遠藤  「本部長、その無線は?」
永井  「えっ? ああ、裏六甲の事故現場ですが、何か? 」



警察病院
手術室の前廊下 
手術中の赤いランプが点いている。
行ったり来たり落ち着かない鈴木。
湊は長椅子に腰かけている。
階段を駆けあがってくる遠藤を見て立ちあがる湊。

湊   「遠藤さん・・・」
遠藤  「友也は、友也は?」