端数報告2
こう書いてるのを説明しました。赤い線で囲った部分ね。しかし、『住所氏名を裏書した』とあるのは嘘。正しくは持ち主の名前だけが書いてあり、〈その男〉は銀行員に、
「欠けてますよ」
と言われて住所だけ書き加えた。
それが事実というのはセーチョーの『小説』を前にスキャンして見せた通りだ。そうなると話は違ってくる。正しい住所を書こうとすればその署名の人物の住所を調べなければならぬが、この当時は電話帳なんてものもやたらになく、個人で電話を持ってる者すら少ないくらいだ。だから難しい。ペンやインク、筆跡なども似せねばならぬがそれも難しい。
だから平沢は名前だけのその小切手をそのまま出して、銀行員が通してくれるのを願った。そうはならずに「欠けてますよ」と言われて急いでデタラメの所番地を書き込んだと見るのがこれは妥当なのだ。
それはわかってもらえますね。で、ここからはあのとき書き洩らし、後で欠けているのに気づいた話なのだが、この件にはもうひとつ大切なところがあった。
平塚八兵衛はこの小切手の件について、『刑事一代』で、
小切手126-127ページ
画像:刑事一代表紙
こう話している。『平沢を洗ってたら、以前に板橋にも』というのに注意。そのときの住所というのが、セーチョーの『小説』には検事の論告要旨として、
画像:小説帝銀事件180-181ページ
アフェリエイト:小説帝銀事件
こう書いてある。おわかりだろうか。銀行員に「欠けてますよ」と言われて書いたデタラメな番地が《板橋三の三六六一》。
平沢が前に住んでいた住所が《板橋三の二六二》。しかも最初は《三の二》と書いて後から《三》と直しているという。
嘘と思うなら『小説』を探して読んでみるといい。ここで見せた通り〈角川文庫・新装版〉の181ページ、その他の版では第二部の〈六〉だ。
齋藤勝裕がこれを知らぬとも思えない。知ったうえで嘘を書いてる。己の〈学説〉に都合の悪いデータを隠して〈論文〉を世に発表する学者は正しい学者と呼べるか。
という話にもなってくるよな。皆さん、決して、甘い言葉に騙されてコロナウイルスのワクチンを試したりしちゃいけませんよ。それは学者は言うでしょう。
「〈第2波〉は必ず起きます。そのとき死ぬ確率は最低3割、おそらく5割か、7割。ヘタすりゃ100パーセント。対してこのワクチンは、0.01パーセントというところです。どちらの率に賭けるのが利口かおわかりになりますよネ」
と。決して乗ってはいけない。第2波が起きる率は0パーセント。対してそのワクチンで死ぬ率はほんとに0.01パーかもしれぬが、狂犬病ワクチンを射った平沢みたいになったり、そこまで行かずともイヤな副作用があるかもしれぬと考えるのが利口です。
ま、あなたがどうなろうとおれはどうでもいいんですけど。前に書いたが平塚八兵衛は、『刑事一代』で、
*
命がけでやってきた捜査(略)
画像:刑事一代表紙
うんぬんと話している。セーチョーの小説にも小樽で捕まった平沢を東京へ護送するとき、途中、函館で詰めかけた記者団に、
*
『おれたちは北海道まで命がけで来たんだぞ』
アフェリエイト:小説帝銀事件
と叫んだ刑事がいる記述がある。おれにはこれが八兵衛じゃないかという気がしてならない。
八兵衛って人として何かが欠けたやつだったんじゃないかという気がしてならない。『命がけ』というのはちょっとおおげさではないのかな。
と思ったのでおれが始めた
粧説帝国銀行事件
https://syosetu.org/novel/234452/
これでは、八兵衛をモデルとする主人公に本当に命懸けで平沢を落としてもらうことにした。齋藤勝裕の嘘では平沢を拷問で自白させたのは八兵衛ということになっている(さっき見せたのの青で囲った部分ね)が、八兵衛は取り調べをさせてもらえずしていない。やったのは検事。
それが史実だ。けれどおれの『粧説』では、主人公・古橋七兵衛に平沢を調べさせることにした。
命懸けで。と言うのも齋藤の本に、
画像:毒の事件簿141ページ
アフェリエイト:毒の事件簿
こう書いてあるところがあって、おれは読み、
「被害者は第2液を飲んだ後、うがいに行き、その後に死亡しています、だって? ふうん」
と思ったからだ。〈被害者らは第2液を飲んだ後、うがいに行き、その後に死亡〉というのはセーチョーの『小説』にも同じ記述があるので事実だろう。ならば――と思っておれの『粧説』にはこれを取り入れることにした。
のだけど詳しくはここに書きません。コロナについてもまとめたことだし、このブログはまたしばらくお休みして『粧説』の方に専念したく思います。連載は〈ハーメルン〉のみ。〈novelist〉ではやりませんのでご注意ください。
あと最後に、小切手の件についてドーマコの本ではこうなっている。これを信じる人の場合はお好きにどうぞ。筆跡鑑定が〈住所氏名〉でなく〈住所のみ〉に行われたことはこれでもわかると思うけどね。
画像:帝銀事件と平沢貞通氏126-127ページ
画像:帝銀事件と平沢貞通氏128-129ページ
画像:帝銀事件と平沢貞通氏表紙