端数報告２
何がなんだか意味のわからないお話
〈ターミネーター〉という単語は一般に〈殺し屋〉の意だと思われているようだがそれは違う。正しい意味は〈問題の最終的解決者〉だ。ヒトラーはユダヤ人の問題に最終的解決をつけようとした。殺し屋だ。ヒトラーはターミネーターである。
ヒトラーがユダヤにしようとしたことを全人類に行うために現れるもの、ターミネーター。カーッコいい！ おれが高校二年のときに、下妻からバスで30分の土浦の映画館で見てシビレましたね。シュワッチェネルガー。シュワちゃんはまだこのとき「シュワちゃん」とは呼ばれておらず、おれは名前を読み間違えて「シュワッチェネルガー」と呼んでいた。
だってその頃はまだテレビでその名前が呼ばれることなんかなかったんだもん。間違いに気づいたのはシュワちゃんが〈アリナミンＶ〉か何かのＣＭに出るようになったくらいかな。それまでずっとシュワッチェネルガーだとばっかり思ってました。
おれはシュワルツェネッガーをシュワッチェネルガーと間違えて憶えていたがそれは違う。正しくはシュワルツェネッガーだ。
そんな話はどうでもいいけど、ターミネーター。ヒトラーもターミネーターならやっぱり殺し屋じゃないか、と思ってはいけない。あくまで問題の解決者なのだ。みんなが困っているときに、突然、どこからともなくに、丸い光に包まれて現れ、
「正しい解決法はこれだ！」
と言ってくれる人。問題の最終的解決者。これもターミネーターだろう。ええ、違うかよ。おれは何か間違ったこと言ってるかよ。辞書引けよ。
と言っても辞書にはそういう意味で〈terminator〉は載ってないけど、意味を正しく汲めばそうなる。やっぱり辞書引いてください。前回ここでちょっと触れた『星を継ぐもの』の主人公、ヴィクター・ハントなんかはおそらくこの意味のターミネーターで最強の男であろう。
埼京線は最強だぜ。埼京線と言えば浦和だぜ。南浦和、北浦和、東浦和、西浦和、武蔵浦和、中浦和。浦和は七つの駅があると上坂すみれも山本リンダの『ウララ』の節で歌っているように、歌ってないかもしれないが、Ｊ・Ｐ・ホーガンの、
アフェリエイト：星を継ぐもの
これを読めば読んだ誰もが、
「えええええっ!!」
と言うことになる。最強のインパク知小説、それがこれだという話は前回にしたけど、今のコロナ問題に最終的な答を出す者は果たして現れるのか。
それは池上彰なのか。
アフェリエイト：池上彰『コロナウイルスの終息は撲滅でなく共存』
という話を何回かしてまいりました。してきたけれど実を言うと池上彰の番組なんか、おれは一度もまともに見たことがない。それでこういうことを書いてる無責任な人間であり、今まで書いてきたことはもちろん全部嘘である。まさかおれがほんとのことを書いてると思って読んでる人もいないと思うが、でも、やっぱりなんとなく、あの池の上の彰人は、
「ボクは池の上の彰人です。ボクの言うことを信じて聞けば、このコロナの禍を生き延びられますヨ」
と画面の向こうから語りかけている気がする。
チラッと見るところではね。何しろテレビをつけるたび、あの宇宙人顔が画面に映りやがるから、「絶対こいつゼイリブだ」としかおれには思えんわけだが、チャンネルを変える前にちょっとは言ってることが聞こえる。聞こえてしまう。
「OBEY」
と。10年前から本当はこいつがそう言ってるのがわかる。けれども今年はちょっと違った。最近でこそこのブログにこんなことを書いているが、少し前までおれはこいつが何言ってるかわからなかった。
「観点！ 声が小さい、観点！」という言葉が「OBEY」と聞こえない。「観点！ 声が小さい、観点！」としか聞こえない。そして言葉がまるっきりおれには意味不明だった。
おれはここ何回か、『〈コロナ禍〉なんか全部マヤカシと最初から気づいていた』と書いてきたけど実を言うと正しくない。『禍などマヤカシ』と思っていたのは事実だが事実のすべてではない。実をいうと、長いこと、テレビが言っていることがなんだかサッパリわからなかった。
『今日は感染者200人！ 今日は感染者300人！ これはいつ第２波が起きてもおかしくない状況と言えます。感染の拡大防止！ 感染の拡大防止！』
とニュースは言う。けれどおれには、意味がひとつも理解できない。日本語のようで日本語でないわけのわからない言葉なのだ。
おれの脳はこの言葉を〈完全に意味不明〉と判定するが、しかし普通の人には通じているらしい。それがまたわからない。おれに理解できないことをどうしてみんなスンナリ理解できるのだ。
感染が拡大すると第２波が起きる。
そう言っているのはわかる。わかるがわからん。これは一体、どんな理屈でそんな話になると言うのか。
わからないのだ。『感染が拡大すると第２波が起きる』。おれにはこれが、
風が吹くと桶屋が儲かる。
とでも言ってるように聞こえる。テレビのニュースが言うことが、おれの耳には、
『風が吹いています！ 風が吹いています！ 風速20メートル！ 30メートル！ これはいつ桶屋が儲かってもおかしくない状況と言えます！』
とでも言ってるように聞こえる。そうとしか聞こえない。
風が吹くとなぜ桶屋が儲かるのか。
おれはその理屈を知らない。もちろん聞いたり読んだりしたことはあるが憶えていない。風が吹くと何がどうなることによって桶屋が儲かるかわからないので、人に、
「風が吹いてるよ。これは桶屋が儲かるだろうね」
と言われても返事に困るしかない。
あるいは、
「あの、失礼ですが、風が吹くと桶屋が儲かるという現象が実際に確かめられているんでしょうか」
とオズオズとたずねるしかない。
おれの耳に『感染が拡大すると第２波が起きる』の言葉はそれとまったく同じにしか聞こえない！ 聞こえないのだ。感染者が300人、これはいつ第２波が起きてもおかしくない状況だとニュースは言う。それは一体、何を根拠にそう言うのだ。学者がそう言ってるのか。学者がそう言ってるから、政府は緊急事態宣言を出したのか。
どうもそういうことらしいが、しかし一体どんな理屈で？ わからない。それがおれにはわからない！ 『第２波が起きる』と言うが〈第２波〉ってなんだよ！
それもおれにはわからない！ 〈第２波〉についての具体的な説明はなく、ただ「第２波」と言うだけだ。300人が感染したら第２波が起きておかしくない状況なのか。人数に関係なくそう言ってるようにしか見えないが、3000人を検査したとき300人が陽性なら10パーセント。それで考えてみることにして、つまり日本全体で一千万が感染してると考えられるという意味なのはわかる。
そしてその一千万はまったくの無症状なのだ。ならいいじゃないかとおれには思えるが、しかしそうではないらしい。無症状者が一千万ということは、いつ第２波が起きてもおかしくない状況と見なければならないのだと学者は言う。