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端数報告2

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《平沢は一月二十八日に東京銀行へ、林誠一のチェーン預金を八万円し、》
 
とあるのがわかりますか。セーチョーはそう書くだけで曖昧にボヤカしてるが、〈林誠一〉とはつまり偽名だ。平沢は《林》というハンコを使って架空名義の口座を作り、そこに8万円のカネを預け入れていたのである。
 
帝銀事件の二日後に。
 
犯人でないのであればなんだってそんなことをすると言うのか。
 
もちろん平沢は、聞いて答えられなかった。セーチョーはこれを人に聞かれたときに、
 
「偽名の口座を作ったからって犯人とは限らんだろうが! 偽名の口座を作ったからって犯人とは限らんだろうが!! 偽名の口座を作ったからって犯人とは限らんだろうが!!! ああ! そうだろう!! 偽名の口座を作ったからって犯人とは限らん!!! そこに8万入れたからってなんの証拠にもならん!!!! だから無実であることに疑いなんか全然ない!!!!! そんなことがわからんのかキミはあぁーーーっっ!!!!!!!!!」
 
と怒鳴るばかりで対話にならなかったんだろうけどね。
 
が、八兵衛の調べによれば平沢が事件直後に手にしていたとはっきりわかっている額は《13万4千円》だが、それは《少なくとも》であって実際にはそれ以上。8万円を林輝一(セーチョーの『小説』では〈誠一〉だが、『刑事一代』では〈輝一〉となってる)名義の口座に、もう8万を家の建築費その他として妻に渡し、他に2万かそこらはあったはずと見られるので合計18万なんぼ、帝銀事件で強奪された金額とほぼ同じということになる。
 
わけだけれども詳しくは『刑事一代』を、決して入手困難と言うほどのものじゃないはずですからどうにかして読んでください。遠藤誠の嘘と違って平沢は、最初についた一連の嘘がバレるとその後は、面会人に大金をどう手に入れたか聞かれると、それまでペラペラおしゃべりだったものがピタリと何も言わなくなったという。『疑惑α』によれば前回見せたように、事件のために辛い生活を送る娘が、
 
 
「お金の出所をはっきり言えないなら、お父さんを犯人と思ってよいのか」
 
 
と聞いたときにも《黙って下を向いたままうなだれてい》た。
 
というのですが、どうでしょう皆さん。セーチョーはこれを知ってもGHQの実験に絶対間違いないのだから平沢は無実と信じ続けた。朝鮮戦争は韓国が先にやったと信じ続け、北朝鮮の田んぼでは米が日本の5倍も10倍も獲れると信じて疑うことがなかった。
 
それが昭和のインテリゲンチャで、セーチョーはそのひとりであったのがもうおわかりのことでしょう。これでも平沢は無実だと考えるなら止めませんから、どうぞ〈救う会〉にでもお入りになればいいんじゃありませんか。たぶん今もどこかでやってて、入会者を求めてると思いますよ。
 
   *
 
あと、よければこちらをどうぞ。二眼レフで白黒の写真を撮る話です。
 
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作品名:端数報告2 作家名:島田信之