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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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#1 身勝手なコンピューター

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「うん、そうなるのも当然だ。物理学の世界じゃね。でも注目してほしいのは、光の照らす範囲は、スリットの幅よりも広くなっているってことだよ」
「光は広がりますからね」
「発光源が出す光の方向性がそうするんじゃなく、まっすぐに入って来たはずの光が、スリット以降、急に広がり始める」
「うん。不思議と言うほどでは」
「細い隙間を通って、まるで屈折したかのように広がってるのは不思議じゃない?」
「そういう現象があるんなら、事実でしょうし」
「証明出来なくっても、観測出来たら信じるんだね」
「ああ、そうか。私はそういう考え方なんですね」
睦美は微笑んだ。
「ふふふ、それでいいんだよ。でもそうも言ってられなくなるから」

 飛鳥山はまた、人差し指を立てたゼスチャーを交えながら、
「光って言うのは実は鉄砲玉みたいにまっすぐ飛ぶ物質じゃなく、ただの波みたいなものなんだ」
「波長とか、波動とか」
「そう。海の波は水っていう物質が、風によって引き起こされる波動だ。光は量子そのものが波動で、その波は空間によって引き起こされているんだ」
「ははあ、ちょっと興味出てきました」
「では、スリットが2本ある板を通った光ならどうなるだろうか」
「光源が一つで、スリットが2本なら、左右の隙間を通り抜けた光がそれぞれ広がって、真ん中だけ二重に照らされて明るくなると思います」
「ははは、そう思うかい? 実際は違うよ」
「どうなるんですか? それ以外結果が思い付きません」
「光は波だから、まっ直ぐ進みながら揺らいでるのかもしれないな。左右のスリットを波が抜けたと想像してみたまえ、左右から中心に向かって広がる波同士がぶつかって、大きなうねりになる。その結果、壁には光が大きく増幅して当たる個所と、そうでない箇所が出来てしまう」
「なるほど。ということは、壁の明るさにはムラが生じるってことですか?」
「ムラどころか、はっきりとした縦筋になって、規則的にいくつも照らされるのだ」
「そういうことか。そんな現象は見たことなかったから知らなかったけど、何か新しい可能性を感じますね」
「そうかい? でもそう思った科学者たちには、混乱や絶望のもとになったんだ」